Q&A
遺言は残された家族への思いやりです。
残された妻や子供たちの間で、遺産を巡る争いが起きることほど、人生の中で悲しいことはありません。 しかし、1通の遺言書があるだけで、相続人間の争いを防ぐことができます。 遺言書があるだけで、遺産をどのように分配するか明確になるため、争う余地がなくなるからです。
また、自分の愛する家族に財産を残すことが可能になります。例えば、子どもがいなかった場合、亡くなった夫の財産は、妻と夫の親、夫の親がいなければ兄妹、というように、妻だけに財産を残すことができません。そうなると、遺産を分けるために、自宅を売却して各相続人に分配することになり、妻は住み慣れた家に住むこともできなくなる可能性がでてきます。こういう場合、「妻に全財産をあげる」という遺言書を書いておくだけで、妻が全財産を取得できる可能性がでてきます。
さらに、遺言書があれば、相続登記にしても、銀行の手続きにしても、煩雑な手続きが非常に楽になるのです。 相続が発生すると通常、戸籍・除籍・原戸籍など何通もの資料を各地から取り寄せることになりますが、遺言書があれば、 それだけで足りてしまうのです。

こんな方は遺言を残すことが必要不可欠です。
① 遺産争いが生じそうな方
② 家業を継がせることを望む方
③ 夫婦に子供がいない方
④ 特別に財産を多く与えたい子がいる方
⑤ 世話をしてくれた息子の嫁に財産を残したい方
⑥ 遺産を与えたくない相続人がいる方
⑦ 財産を寄付するなどとして社会貢献したい方
⑧ 先妻の子や後妻の子がいる方
⑨ 認知した子がいる方
⑩ 法定相続人がいない方
料金について
遺言書作成報酬
算定基準の額が1000万円以下の場合
210,000円

1000万円を超え3,000万円以下の場合
315,000円

3,000万円を超え3億円以下の場合
525,000円

3億円を超える場合
105万円

※上記の額は、事案の複雑さ及び事件処理に要する手数の繁簡を考慮し、増減します。
公正証書にする場合、上記の手数料に31,500円を加算します。
遺言執行報酬
算定基準の額が300万円以下の場合
 
315,000円

300万円を超え3,000万円以下の場合
(3%+21万円)
×1.05

3,000万円を超え3億円以下の場合
(2.5%+36万円)
×1.05

3億円を超える場合
(2%+186万円)
×1.05

※遺言執行に裁判手続を要する場合は、遺言執行手数料とは別に、裁判手続に要する弁護士報酬を請求します。
遺言Q&A
Q.
遺言とはなんですか?

A.
遺言とは、遺言者の死後もなるべくその意思を尊重するために、遺言者の死後の財産関係や身分行為等について定めておくことをいいます。
遺言は、一定の様式を満たさなければ法律上の効果が生じないため、信頼性の点で確実な公正証書遺言が選択される場面が多いといえます。
遺言によって定めることが可能な事項については、法律で規定されていますので、例えば、家族仲良くすることを遺言したとしても、法的効力を生じません。
また、民法には、例えば、妻が2分の1、子が2分の1などと相続分が決められています。しかし、遺言がある場合には、相続に関しては遺言が優先します。つまり、遺言が原則、法定相続が例外という序列になっているのです。従って、相続が開始した場合には、まず遺言書があるかどうかの調査が必要になります。 もし適式な遺言書があれば、 遺言が優先され、法定相続の場面ではなくなります。
例えば、遺言で、個々の財産について遺産分割方法の指定や遺贈を行えば、 最終的な権利の帰属が決定することになります。 その結果、相続開始後、 相続人間で遺産分割をする必要もなく、 遺産をめぐる紛争が生じる余地は、 ほとんどなくなるといえます。 適式な遺言書が作成されずに死亡した場合、法定相続人のみが遺産を承継することができ、相続人が存在しない場合にのみ、特別縁故者への財産分与が問題になるにすぎません。
よって、被相続人が、その死後に、法定相続人以外の者に遺産を承継させたいと考える場合、遺言書を作ることが必要です。 被相続人が遺言書を作成する場合、 自己の財産の全体を把握し、 意識的に財産を整理、 一覧化するのが通例です。 被相続人がこのような作業を経ることによって、 結果的に、遺産の整理や把握がされ、遺産の範囲をめぐる将来の紛争防止に役立つことも少なくありません。
尚、遺留分による制限については注意が必要です。 兄弟姉妹以外の相続人には、相続に際しての最低限度の取り分として遺留分が保障されています。 遺言者が、遺留分を侵害する財産配分を規定した遺言を作成した場合、遺留分権利者からの遺留分減殺請求によって、事後的に遺言条項の一部が効力を生じないことになります。 この点において、遺言者の自由意思が制約される場面も生じます。

Q.
夫婦で一つの遺言書を作ることはできますか?

A.
2人以上の者が、同一の証書(遺言書)で遺言を行うことを共同遺言といいます。 法律は共同遺言を禁じています(民法975条)。 共同遺言を認めると、複雑化したり、各遺言者が遺言を撤回、変更できる範囲があいまいになって、遺言の自由を制限するおそれがあるなど、不都合が生じるからです。 たとえ、遺言条項として完全に独立して、それぞれの遺言条項の作成者が明確に特定できる場合でも、複数人が同一の証書で遺言を行えば、共同遺言となります。 なお、作成名義の異なる2通の遺言書が、別紙に記載されてつづられているものの、容易に切り離すことができる場合には、共同遺言にあたらないとされた裁判例(最高裁平成5年10月19日判決)が存在します。 「同一の証書」の解釈にあたっては、各遺言者にかかる遺言部分が証書として容易に分離できるか否かが基準となります。

Q.
未成年者でも遺言をすることはできますか?

A.
未成年者でも、満15歳に達したならば、有効に遺言をすることができます。 また、満15歳以上であるならば、法定代理人が未成年者にかわって遺言を行うことも許されていません。 遺言は、遺言者の最終意思を尊重する制度であるため、未成年者の場合でも、一般の法律行為とは違った扱いがされています。

Q.
認知症の人でも遺言をすることはできますか?

A.
遺言を行うためには、遺言をする時において、その能力を有しなければなりません。 この能力は、自分の行う遺言が法律的にどのような効果を生じるかを理解する能力のことをいい、法律上「意思能力」ないし「遺言能力」とよばれています。 日本では、意思能力の程度によって、成年後見、保佐、補助という制度が整備されています。 しかし、遺言は遺言者の最終意思を尊重する制度であるため、これらの規定の適用はなく、遺言者本人に意思能力(遺言能力)があるかどうかが問題となります。 ただし、成年被後見人が有効に遺言するためには、医師2人以上の立会いが必要とされています(民法937条)。 遺言を行う意思能力があるかどうかは、遺言時における本人の具体的状態に応じて判断されます。よって、認知症の人であるから必ず意思能力が認められないというわけでありません。 遺言を作成しようとする者の認知症の程度や理解力、遺言作成の動機や経緯、遺言によって生ずる法律効果の複雑性、遺言条項の複雑性等から総合的に判断して、遺言者が遺言条項及びその効果を理解できるような場合には、その遺言については意思能力があると認められます

Q.
口がきけない人や耳が聞こえない人が遺言をすることはできますか?

A.
自筆証書遺言は、本人が遺言を行う意思のもと自書をすればよいため、書字能力があれば、口がきけない人や耳が聞こえない人でも遺言をすることはできます。 公正証書遺言は、原則として、遺言者から公証人への遺言の趣旨の口授、公証人から遺言者への遺言内容の読み聞かせ(ないし閲覧)が必要とされています。 しかし、平成12年の民法改正により、遺言者の口授にかわって通訳ないし自書の要件が、公証人の読み聞かせにかわって通訳の要件が認められたため、口がきけない人や耳が聞こえない人でも、筆談や手話を利用することによって、公正証書遺言ができるようになりました。 秘密証書遺言の場合も、原則として、遺言者が公証人や証人に対して、封書に封入した遺言書が自己の遺言書であることや、その氏名、住所を申述する必要がありますが、口がきけない人について、申述にかわる通訳ないし自書の要件が認められています。

Q.
遺言にはどのような種類がありますか?

A.
遺言の方式には、 普通方式と特別方式があります。
普通方式の遺言
(1)自筆証書遺言 (民法968条)
(2)公正証書遺言 (民法969条)
(3)秘密証書遺言 (民法970条)
特別方式の遺言
特別方式の遺言は、 遺言者の死亡が迫っている場合や遺言者が一般社会と隔絶した環境にあるため、 普通方式による遺言ができない場合に限って認められるものです。 死亡の危急からの回復や、隔絶状態の終了によって、遺言者が普通方式の遺言を行うことが可能になった時から6ヶ月間生存するときは、特別方式の遺言の効力は失われます。そのため、同内容の遺言を実現するためには、改めて普通方式の遺言を行う必要があります。
遺言者に死亡が迫っている場合の遺言として、
(1)一般危急時遺言(民法976条)
(2)難船危急時遺言(民法979条)
一般社会と隔絶した環境にある場合の遺言として、
(3)伝染病隔絶地遺言(民法977条)
(4)船舶隔絶地遺言(民法978条)

Q.
自筆証書遺言とは何ですか?

A.
自筆証書遺言とは、 遺言者が、
(1)遺言書の全文、日付、氏名を自書し
(2)これに押印すること
によって作成される遺言です。
自筆証書遺言の加除、 その他の変更は、 遺言者がその場所を指示し、 これを変更した旨を付記して署名し、 かつその変更場所に押印しなければならないことになっています。 自筆証書遺言は、筆記用具と紙、印鑑があれば作成することができるため、普通方式の遺言中、最も簡便に作成することができる遺言です。反面、紛失や変造のリスクは高いといえます。 遺言の作成にあたって、証人や立会人、遺言書の封入は要求されておらず、遺言者の死亡後に家庭裁判所で検認手続を行う必要があります。 遺言者の自筆が要求されているのは、自筆証書遺言の作成には証人や立会人が必要でないこととの関係上、遺言内容が遺言者の意思にもとづくことを明らかにしておくためです。 日付の記載が要求されているのは、複数の遺言が発見された場合に、遺言者の最終の意思を記載した遺言がどれであるかを判別するためです。また、遺言作成時点を明らかにしておけば、遺言時の年齢や意思能力(遺言能力)といった遺言の有効要件を判別する手がかりにもなります。

Q.
公正証書遺言とは何ですか?

A.
公正証書遺言は、
(1)証人2名以上の立会いがあること
(2)遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
(3)遺言者が口授した内容を公証人が筆記して公正証書を作成し、 これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること
(4)遺言者及び証人が公証人の筆記の正確なことを承認した後、 各自署名、 押印すること
(5)公証人が適式な手続に従って公正証書を作成したことを付記して、 これに署名、 押印すること
によって作成される遺言です。
公正証書遺言は、公証人の関与のもと、証人が立ち会って、遺言内容についての公正証書が作成されます。 遺言作成後に、遺言者にはその謄本が交付され、遺言書の原本は、作成の日から20年間は公証人役場に保管されることとなっています。 このように、遺言の作成、保管について公証人が関与し、遺言書の紛失や変造のおそれもないことから、他の形式の遺言に比して、遺言に関する紛争が最も生じにくい遺言であるため、実務上最も多く選択される形式です。 また、公証人役場で、被相続人が公正証書遺言を作成していないかどうかを照会することも可能です。

Q.
秘密証書遺言とは何ですか?

A.
秘密証書遺言は、
(1)遺言者が証書(遺言書)に署名し、押印すること
(2)遺言者がその証書を封じ、 証書に用いた印章でこれに封印をすること
(3)遺言者が公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して、 それが自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること
(4)公証人がその証書の提出された日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、 遺言者及び証人とともに署名押印すること
によって作成される遺言です。
秘密証書遺言の加除、 その他の変更は、 遺言者がその場所を指示し、 これを変更した旨を付記して署名し、 かつその変更場所に押印しなければならないことになっています。 秘密証書遺言は、証書(遺言書)の封入に関して公証人が一定の関与を行いますが、遺言の内容そのものは遺言者が決定、記載し、公証人への口授等も行われないため、公証人や証人に遺言内容を知られることはない反面、公証人が遺言内容や形式の不備をチェックすることはできません。また、遺言者の死亡後に家庭裁判所で開封、検認手続を行う必要があります。 また、遺言書の原本は公証人役場に保管されるわけでないため、紛失、変造のリスクも存在します。 秘密証書遺言は、遺言者が遺言内容を秘密にしておきたい場合にとるべき形式といえます。

Q.
一般危急時遺言とは何ですか?

A.
一般危急時遺言とは、
(1)遺言者が疾病その他の事由によって、 死亡の危急に迫っている場合に
(2)証人3人以上の立会があること
(3)その1人に遺言の趣旨を口授すること
(4)口授を受けた証人が遺言の趣旨を筆記し、 遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させること
(5)各証人がその筆記の正確なことを承認した後、 署名、 押印すること
によって作成される遺言です。
一般危急時遺言の効力発生要件
一般危急時遺言は、普通方式の遺言の例外として認められるものであるため、その効力発生には、家庭裁判所の確認が要求されています。
具体的には、
(1)遺言の日から20日以内に証人の1人又は利害関係人から家庭裁判所に一般危急時遺言の確認の請求をすること、
(2)家庭裁判所が、その遺言が遺言者の真意を表明したものであるという心証を得て確認を行うこと
が必要となります。
危急状態からの回復
遺言者の死亡後には、別途家庭裁判所で遺言書の検認手続を経る必要があります。 一方、死亡の危急からの回復によって、遺言者が普通方式の遺言を行うことが可能になった時から6ヶ月間生存するときは、一般危急時遺言の効力は失われます。

Q.
自筆証書遺言のメリット、デメリットはなんですか?

A.
作成手続が極めて簡略である点、 費用がかからない点、 遺言作成の事実を誰にも知られない点、などのメリットがあります。 一方、方式不備で遺言が無効となったり、遺言内容の真意が争われる可能性が高い点、遺言書が公証人役場に保存されないため、 偽造、 変造、 紛失、 滅失のおそれがある点、遺言書の検認手続が必要な点、などのデメリットがあります。

Q.
公正証書遺言のメリット、デメリットはなんですか?

A.
遺言書の原本が公証人役場に20年間は保存されるため、偽造、 変造、紛失、 滅失のおそれがない点、遺言書の作成に公証人が関与するため、 遺言者の意思を正確に実現しやすい点、 方式不備によって遺言が無効とされる可能性が低い点、遺言書の開封や検認手続が不要である点、などのメリットがあります。 一方、公証人費用ほか一定の書類が必要となる点、証人を用意しなければならない点、証人等に遺言内容が知られてしまう点などのデメリットがあります。公正証書遺言のデメリットはほとんど手続的なものにとどまり、遺言の効力という本質的事項に関わるデメリットはないといえます。よって、遺言を行う場合には、なるべく公正証書遺言によるべきでしょう。

Q.
秘密証書遺言のメリット、デメリットはなんですか?

A.
遺言書の存在を明らかにしながら遺言内容を秘密にしておける点、遺言書の封入に公証人が関与するため、封入後の偽造、変造のおそれが少ない点、などのメリットがあります。 一方、公証人は遺言書の作成には関与しないため、遺言内容の真意が争われる可能性が高い点、遺言書の原本は公証人役場に保存されないため、 紛失、 滅失等の危険がある点、公証人費用がかかる点、証人を用意しなければならない点、遺言書の開封、検認手続が必要な点、などのデメリットがあります。

Q.
公正証書遺言を作成するのに必要な書類はなんですか?

A.
公正証書という公文書の作成手続上、遺言者ほか遺言関係者を特定したり、遺言事項を特定するための資料、書類が必要となります。
必要資料、必要書類
(1)遺言者の戸籍謄本、住民票の写し
(2)遺言者の印鑑証明書と実印
(3)証人の住民票の写し
(4)相続人、受遺者の戸籍謄本、住民票の写し
(5)遺言執行者の住民票の写し
(6)不動産登記簿謄本、固定資産評価証明書等
(7)遺言書の原案
等が必要となります。
遺言の内容によっては、その特定のために(6)以外の書類が必要となることがありますので、公証人に事前に確認を行う必要があります。

Q.
遺言の証人、立会人になれないのは誰ですか?

A.
公正証書遺言、秘密証書遺言、特別方式の遺言の作成にあたって、証人や立会人が必要とされます。 その理由は、遺言者の意思確認、遺言条項の確認や、遺言封入の確認を行うためです。 そのような目的に照らした場合、遺言者や公証人と利害関係があったり、判断能力が未熟な者を証人、立会人とすることは、ふさわしくないため、民法上、一定の欠格事由が規定されています。
欠格事由
(1)未成年者
未成年者は、その判断能力の未熟さゆえ、欠格者とされています。
たとえ法定代理人の許可があっても証人、立会人となることができません。
(2)推定相続人、受遺者及びその配偶者並びに直系血族
遺言者及び遺言内容に強い利害関係を持つことから欠格者とされています。
(3)公証人の配偶者、 四親等内の親族、 書記及び使用人
遺言者及び遺言内容と直接の利害関係を持たないものの、 遺言の秘密を知る機会を持ち、 かつ公証人の影響の範囲内にあることから、 欠格者とされています。

Q.
ワープロを作って作成した遺言書は有効ですか?

A.
自筆証書遺言は、遺言書の全文、日付、氏名について遺言者が自書することが要求されています。 自筆証書遺言は、公証人や証人の関与なしに作成されるため、遺言内容が遺言者本人の意思に基づくことを明らかにするために、自書が必要となるのです。 従って、ワープロを使用して遺言書を作成した場合、自筆証書遺言としての効力は認められません。 秘密証書遺言については、遺言書への署名についてのみ、遺言者が自書することが要求されています。 秘密証書遺言は、遺言者が公証人及び証人に対して、封書に封入した証書(遺言書)が自己の遺言書であるという申述を行うため、遺言書の作成者と遺言者の同一性は担保されているといえます。 このため、自筆証書遺言のように遺言書全文の自書は要求されず、署名のみの自書で足りるとされているのです。 ワープロを使用して遺言書を作成した場合でも、遺言者本人の署名が自書であれば、秘密証書遺言としての効力は認められます。 公正証書遺言の場合には、遺言書は公証人によって作成されます。ワープロで作成した後に、遺言者等が署名を自書します。

Q.
他人の補助 (添え手) を受けて書いた遺言書は有効ですか?

A.
自筆証書遺言については、全文、日付、氏名の自書が必要とされています。 自筆証書遺言の有効要件として全文の自書までもが要求されているのは、自筆証書遺言には、証人や立会人が必要とされておらず、遺言内容が遺言者の意思にもとづくことを明らかにするためです。 それゆえ、他人が遺言書を記載したような場合には、自筆証書遺言の効力は認められません。 では、遺言者が遺言書を記載したものの、他人の補助 (添え手) を受けて書いた場合、遺言書は有効となるかという問題が生じます。 なお、公正証書遺言は、公証人が遺言書を作成し、秘密証書遺言については、遺言書そのものの自書は必要とされていないため、このような問題は事実上生じません。 最高裁昭和62年10月8日判決 他人の添え手によって書かれた自筆証書遺言の効力については、 自書を要件とした民法の趣旨に照らし、 原則として無効であるとしています。
ただし、
(1)遺言者が自書能力を有し、
(2)他人の添え手が、 始筆若しくは改行にあたり若しくは字配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に置くにとどまるか、 遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされて単に筆記を容易にするための支えを借りただけであり、
(3)添え手をした他人の意思が運筆に介入した形跡がないことが筆跡のうえで判定できる場合、 には、実質的には自書の要件を満たすものとして有効であると判示しました。 このように、例外は非常に厳しい要件となっているため、他人の添え手によって自筆証書遺言を作成することは慎むべきといえます。

Q.
遺言書に記載する氏名は、通称でも大丈夫ですか?

A.
自筆証書遺言では、氏名の自書が要求されているだけで、その「氏名」の意義までは指定されていません。 氏名の自書は、遺言者の特定や遺言者の同一性を確認するためになされるものですから、戸籍上の氏名と同一である必要はなく、 通称、 雅号、 ペンネーム、 芸名などであっても遺言者と特定できる名称であれば有効です。 公正証書遺言、秘密証書遺言の場合には、遺言書の作成や遺言書の封入に公証人が関与します。 公証人は遺言者の特定や同一性を確認するため、戸籍謄本や住民票、印鑑証明書の提出が求めることになります。 そのため、現実には戸籍上の氏名や印鑑登録されている氏名を遺言書や封書に記載することになります。 秘密証書遺言の場合、公証人の面前では、遺言者は封書にのみ氏名の自書を行いますが、遺言書の署名もそれと同一でなければなりません。

Q.
遺言書の日付が実際の作成日と異なる場合、遺言書は有効ですか?

A.
自筆証書遺言において、日付を記載する意義は、遺言作成時の遺言者の年齢を特定したり、遺言者が意思能力(遺言能力)を有していたか否かを判断するための基準日を明らかにしたり、2通以上の遺言が存在する場合にその先後を判別するためです。 従って、遺言書の日付が実際の作成日と異なる場合には、上記基準としての日付の意義が不明確となるため、遺言が無効となるのが原則です。
例外
(1)遺言書の日付と実際の作成日にほとんど齟齬がない場合
(2)遺言書の日付の記載が単なる誤記であり、 真実の作成日が遺言の記載その他から容易に判明する場合 等には、遺言は無効とならないと解釈されています。
(1)について、全文を自書した日から8日後にその日の日付を記載した場合でも、遺言の有効性を認めた判例(最高裁昭和52年4月19日判決)、 (2)について、昭和48年に死亡した遺言者が、 日付の年号を 「昭和28年」 と記載した事案につき、 日付記載が誤記であること及び真実の作成日が遺言書の記載その他から容易に判明する場合に、 遺言の有効性を認めた判例(最高裁昭和52年11月21日判決)があります。 公正証書遺言、秘密証書遺言については、日付が公証人によって記載されるため、このような問題は事実上生じません。

Q.
遺言書の日付の記載について質問です。

A.
自筆証書遺言において、日付を記載する意義は、遺言作成時の遺言者の年齢を特定したり、遺言者が意思能力(遺言能力)を有していたか否かを判断するための基準日を明らかにしたり、2通以上の遺言が存在する場合にその先後を判別するためです。 従って、このような趣旨にかなう日付の記載方法であれば、「年月日」以外の特定方法でも認められることとなります。 例えば、「私の50歳の誕生日」「私の還暦の日」という記載は日付の特定が可能といえるため、認められます。 一方、年月だけ記載して日を特定しない記載は認められません。 また、何年何月吉日という記載も日付の特定を欠くため、認められません(最高裁昭和54年5月31日判決)。 なお、公正証書遺言、秘密証書遺言については、日付が公証人によって記載されるため、このような問題は事実上生じません。

Q.
遺言書への押印は、認印や拇印でも大丈夫ですか?

A.
自筆証書遺言の場合
民法上、押印が要求されているだけで、その「印」の意義までは指定されていません。 押印は、遺言者の特定や遺言者の同一性の確認のためになされるものですから、必ずしも実印である必要はなく、 認印でも有効です。 拇印に関しては、実際に裁判で争われたケースがありますが、有効という結論が下されています(最高裁平成元年2月16日判決)。 もっとも、遺言の有効性について相続人間で争いが生じた場合、遺言書の印が本人の印であるかについて争われる場合がありますから、可能な限り実印を使用するべきといえます。 公正証書遺言、秘密証書遺言の場合、遺言者の特定や同一性の確認のため、印鑑証明書の提出が求められます。 よって、現実には実印を使用することになります。 秘密証書遺言の場合、公証人の面前では、遺言者は封書にのみ押印を行いますが、遺言書の押印もそれと同一でなければなりません。

Q.
遺言書の訂正方法を教えて下さい。

A.
自筆証書遺言、秘密証書遺言については、遺言の加除、 その他の変更は、 遺言者がその場所を指示し、 これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、 かつその変更場所に押印しなければなりません(民法968条2項)。 公正証書遺言の場合についても、文字の挿入や削除について、その字数及びその箇所を欄外又は末尾の余白に記載して、変更箇所に捺印しなければならないことになっています(公証人法38条)。 公正証書の場合、方式違反の訂正は効力を生じないと明記されていますが(公証人法38条)、自筆証書遺言、秘密証書遺言について、方式違反の訂正について訂正の効力を認めてよいかが問題となります。 民法が遺言書の訂正の方式を法定していること、公正証書における方式違反の効果との比較から、方式違反の訂正は、自筆証書遺言、秘密証書遺言ともに効力を有しないと解釈する立場が有力です。 次に方式違反の訂正があった場合に、その訂正条項のみならず、遺言全体が無効になるかという問題が生じます。 この場合は、遺言全体に占める訂正条項の重要性から判断して、訂正条項の無効が遺言全体に重大な影響を及し、遺言の趣旨、目的を没却するにのみ、遺言全体が無効になると解釈する立場が有力です。

Q.
遺言書において、財産や人物はどのように特定すればよいのですか?

A.
遺言の記載があいまいで、遺言書の他の記載やその趣旨をもっても、遺言者の意思を客観的に確定できない場合、遺言としての効力は生じません。また、後の紛争を防止するためにも、遺言の内容は可能な限り特定して行うべきでしょう。 例えば、「自宅の土地建物を孫に遺贈する」という遺言も、自宅建物が1箇所のみで孫が1人の場合は、特定の方法として有効といえますが、可能な限り特定するというために、 下記を記載することが好ましいでしょう。
(1)不動産については、登記簿の記載に従って、地番、地目や建物の種類、地積や床面積、構造
(2)預貯金は、金融機関名、支店名、口座の種類、口座番号
(3)株式は、発行会社名、株式の種類、株数、株券が発行されている場合はその番号
(4)債権は、債務者の住所、氏名ないし商号、債権発生の原因や日時、債権額、利息額、弁済期
(5)人物は、氏名、生年月日、住所地ないし本籍地、遺言者との続柄

Q.
公証人役場以外でも公正証書遺言や秘密証書遺言を作成することはできますか?

A.
公正証書遺言の作成や秘密証書遺言の封入には公証人の立会いが必要となるため、通常は遺言者の住所地を管轄する公証人役場に、遺言者及び証人が出向いて、遺言の作成ないし封入の手続がなされます。 公証人は、原則として公証人役場で職務を行うこととされていますが、遺言の作成の場合には出張が認められています(公証人法57条)。 そのため、公証人が遺言者の自宅や入院先の病院等に出張して、公正証書遺言の作成や秘密証書遺言の封入に立ち会うことが可能です。 もっともその場合、出張費用や日当が加算されますので、事前に公証人役場に確認するとよいでしょう。

Q.
遺言に定めることができる事項にはどのようなものがありますか?

A.
遺言によって定めることが可能な事項については、法律で規定されています。 それ以外の事項を遺言に記載しても、それは法律上の効力を生じず、事実的、訓示的な意味を有するにとどまります。 法定されている遺言事項
(1) 信託の設定 (信託法2条)
(2) 非嫡出子の認知 (民法781条2項)、
(3) 相続人の廃除又はその取消 (民法893条、 894条2項)
(4) 未成年後見人の指定(民法839条1項)
(5) 未成年後見監督人の指定 (民法848条)
(6) 財産の処分すなわち遺贈 (民法964条、 986条~1003条)
(7) 寄附行為 (民法41条2項)、
(8) 相続分の指定又は指定の委託 (民法902条1項)
(9) 遺産分割方法の指定又は指定の委託 (民法908条)
(10) 遺産分割の禁止 (民法908条)
(11) 特別受益持戻しの免除(民法903条3項)
(12) 相続人の担保責任の指定 (民法914条)
(13) 遺贈の減殺方法の指定 (民法1034条但書)
(14) 祭祀主宰者の指定 (民法897条)
(15) 遺言執行者の指定又は指定の委託 (民法1006条)

Q.
法定されている遺言事項のうち、遺言だけでなく、遺言者の生前行為によっても実現できるものは何ですか?

A.
法定の遺言事項のうち、遺言だけでなく、遺言者の生前行為によっても実現することが可能なものと、遺言によってのみ行うこととされ、遺言者の生前行為によって行うことが許されていないものがあります。 後者は、法律上「遺言によって」行うことが明記されているものです。 遺言だけでなく遺言者の生前行為によっても実現できるものは、下記です。
(1)信託の設定 (信託法2条)
(2)非嫡出子の認知 (民法781条2項)、
(3)相続人の廃除又はその取消 (民法893条、 894条2項)
(4)財産の処分すなわち遺贈 (民法964条)
(5)寄附行為 (民法41条2項)、
(6)遺言者の生前の特別受益についての持戻しの免除(民法903条3項)
(7)祭祀主宰者の指定 (民法897条)
(8)遺言事項

Q.
法定されている遺言事項のうち、遺言によってのみ許され、遺言者の生前行為によってはできないものは何ですか?

A.
法定の遺言事項のうち、遺言だけでなく、遺言者の生前行為によっても実現することが可能なものと、遺言によってのみ行うこととされ、遺言者の生前行為によって行うことが許されていないものがあります。 後者は、法律上「遺言によって」行うことが明記されているものです。 遺言によってのみ行うこととされ、遺言者の生前行為によって行うことが許されていないものは、下記です。
(1)未成年後見人の指定(民法839条1項)
(2)未成年後見監督人の指定 (民法848条)
(3)相続分の指定又は指定の委託 (民法902条1項)
(4)遺贈についての特別受益の持戻しの免除(民法903条3項)
(5)遺産分割方法の指定又は指定の委託 (民法908条)
(6)遺産分割の禁止 (民法908条)
(7)相続人の担保責任の指定 (民法914条)
(8)遺贈の減殺方法の指定 (民法1034条但書)
(9)遺言執行者の指定又は指定の委託 (民法1006条)

Q.
遺贈とは何ですか?

A.
遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる、と規定されています(民法964条)。 遺贈とは、遺言者が遺言により、その一方的意思によって行う財産処分のことを指します。 そして、この遺贈の利益を受ける者を「受遺者」と呼びます。 また、遺贈には、特定遺贈と包括遺贈があります。 特定遺贈とは、「A不動産を甲に与える」 というように、 特定された財産を対象とする遺贈のことをいいます。 特定遺贈は、遺言者の死亡によってその効力を生じ、特定された財産の所有権が受遺者に移転します。 包括遺贈とは、「遺産の何分の1(ないし全部)を甲に与える」 というように、 遺産の全部またはその分数的割合を指定するにとどまり、 目的物を特定しないでする遺贈のことをいいます。 包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する、と規定されているため、遺言者の一身専属権を除いた全ての財産上の権利義務を受遺分の割合で承継します。 よって、他の相続人や他の包括受遺者があるときは、 それらの者との遺産共有関係が生じ、遺産分割によってその共有関係を解消することになります。 特定遺贈は、受遺者が特定された積極財産だけを承継するのに対し、包括遺贈は、受遺者が積極、消極両財産を承継するという点に違いがあります。

Q.
後継ぎ遺贈とは何ですか?

A.
後継ぎ遺贈とは、甲が自らの死後、その全財産を乙に遺贈するが、乙の死亡後は丙に遺贈するというというように、第一次受遺者(乙)の受ける財産上の利益が、ある条件の成就や期限の到来した時から第二次受遺者(丙)に移転することを規定した遺贈のことをいいます。 後継ぎ遺贈は、甲の遺言により、甲→乙のみならず、乙→丙という財産承継をも規定するものです。 この甲→乙の部分については、単純な遺贈として有効であることに問題はありませんが、後の乙→丙の部分についても効力を有するのかが問題となります。 後継ぎ遺贈は民法に規定がなく、裁判例においても、後継ぎ遺贈の効力そのものについて判断を示したものがないため、その効力については解釈に委ねられていますが、無効説が通説となっています。 その理由としては、後継ぎ遺贈を認める法文上の根拠がないこと、上記の乙→丙の財産承継については、乙が決定すべきものであり、乙の財産処分の自由を不当に侵害するものであること、があげられています。 信託との対比 信託法91条では、受益者が死亡したときに他の者が受益権を取得する旨の定めがある信託は、信託がされた時から30年経過した時以後に現存する受益者が受益権を取得し、その受益者が死亡するまでの間継続する、と規定されています。 すなわち信託の場合には、第1次受益者を乙とし、乙の死亡後は丙を第2次受益者と指定することが可能であるため、後継ぎ遺贈と同様の効果を意図した資産承継を行うことが可能となります。

Q.
包括受遺者と相続人の違いについて教えてください。

A.
包括遺贈とは、「遺産の何分の1(ないし全部)を甲に与える」 というように、 遺産の全部またはその割合を指定するもので、 目的物を特定しないでする遺贈のことをいいます。 包括遺贈は、被相続人の地位の割合的承継であり、この点で、相続分という割合において被相続人の地位を承継する相続人と共通することから、「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する」と規定されています。 包括受遺者は、相続人と同様に、 遺言者の一身専属権を除いた全ての財産上の権利義務(積極財産及び消極財産)を受遺分の割合で承継し、遺産分割にも参加して遺産共有関係を解消することになります。
~包括受遺者と相続人の違い~
(1)法人と包括遺贈
法人には相続が観念できないため、相続人とはなり得ませんが、 包括受遺者にはなることはできます。
(2)遺留分
包括受遺者は、 相続人と異なり遺留分を有しません。遺留分は、相続人固有の権利と解釈されているからです。
(3)代襲
包括受遺者については、相続人と異なり代襲相続は発生しません。 遺言の効力発生時に受遺者が存在しなければ、遺贈に関する遺言条項は失効します。
(4)保険金受取人
保険金受取人として 「相続人」 という指定がなされている場合でも、 包括受遺者は、 この「相続人」 には含まれません。

Q.
遺贈の放棄はできますか?

A.
たとえ財産の処分(受遺者からみれば財産の譲受)といえども、遺言者の一方的行為によってそれを強制することまでは認められていません。 したがって、受遺者は、遺贈を承認するか、放棄するかの選択することができます。 特定遺贈の場合、その承認や放棄の手続については、法律上の規定が存在しません。それゆえ、受遺者において、口頭、書面を問わず承認や放棄の意思表示を行えば足りますし、相続承認、放棄のような熟慮期間も存在しません。 包括遺贈の場合、包括受遺者が相続人と同一の権利、義務を負うという関係上、遺贈の放棄も相続放棄の様式を遵守する必要があると解釈されています。 特定遺贈の場合、遺贈の承認、放棄には、特段の期間制限が存在しないため、遺贈義務者その他の利害関係人には、受遺者に対して、遺贈を承認するか放棄するかを催告する権利が認められています。 すなわち、相当の期間を定め、その期間内に遺贈の承認または放棄すべき旨を受遺者に催告することができ、もし、その期間内に受遺者が意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなされます。 もし、遺贈の放棄によってその効力がなくなったときは、受遺者が受けるべきであった財産は、相続人に帰属します。ただし、遺言に別段の規定があるときは、それに従います。

Q.
受遺欠格とは何ですか?

A.
受遺者とは、遺贈によって利益を受ける者のことです。 自然人、胎児、法人いずれも受遺者となれますが、受遺者には相続欠格の規定が準用されます(民法965条が準用する891条)。 受遺者が、不正な行為によって、相続を発生させようとしたり自己の取り分を多くしようとした場合、そのような者に遺贈を受ける資格を認めることは、正義、公平の観点から許されません。 従って、下記の者は遺贈を受けることができません。
欠格事由
(1)故意に被相続人または相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡するに至らせ、または至らせようとしたために、刑に処せられた者
(2)被相続人が殺害されたことを知って、これを告発せず、または告訴しなかった者
(3)詐欺又は脅迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、またはこれを変更することを妨げた者
(4)詐欺または脅迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
(5)相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した者と規定されています。
欠格事由に該当する行為をした者は、特段の手続を要せずに、遺贈を受ける資格を剥奪されます。 受遺欠格者に対する遺贈を規定した遺言は、その条項について当然無効となります。

Q.
受遺者が死亡した場合に、遺贈の効力はどうなりますか?

A.
遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その遺贈は効力を生じないと規定されています。 遺言は、遺言者の死亡時にその効力が発生するため、遺言の効力発生時に受遺者が存在している必要があるためです。これを同時存在の原則といいます。 そのため、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡した場合のみならず、遺言者と受遺者が同時に死亡したときにも遺贈は効力を生じません。 受遺者の死亡によって遺贈の効力がなくなったときは、 受遺者が受けるべきであった財産は、 相続人に帰属します。ただし、遺言に別段の規定があるときは、それに従います。 遺言者の死亡よりも後に受遺者が死亡した場合には、遺贈が一度効力を生じた後に受遺者が死亡したことになるため、受遺者の相続人が受遺者の地位を承継します。 受遺者によって既に遺贈の承認がなされていた場合には、相続人が遺贈された財産を承継します。 受遺者が遺贈の承認、放棄がなさないまま死亡した場合は、受遺者の相続人において、その相続分の範囲で遺贈の放棄、承認をすることができます。ただし、遺言に別段の規定があるときは、それに従います。

Q.
受遺者が遺言者の死亡以前に死亡してしまう事態にどのように備えることができますか?

A.
遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その遺贈は効力を生じないと規定されています(民法994条)。 遺言は、遺言者の死亡時にその効力が発生するため、遺言の効力発生時に受遺者が存在している必要があります。これを同時存在の原則といいます。 よって、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡した場合のみならず、遺言者と受遺者が同時に死亡したときにも遺贈は効力を生じません。 この受遺者の死亡によって遺贈の効力がなくなったときは、 受遺者が受けるべきであった財産は、 原則として相続人に帰属します。 遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、受遺者の死亡後になって、遺言者が改めて遺言をすることが考えられますが、その時点で遺言者が意思能力を喪失している可能性もないとはいえません。 遺言者としては、当初の遺言作成の時点において、遺贈財産について、指定した受遺者以外に承継させるべき候補者が存在するような場合には、先に指定した受遺者が遺言者の死亡以前に死亡してしまう事態に備えて、予備的な(第二順位の)受遺者を規定しておくべきといえます。予備的受遺者の規定は、その氏名、生年月日、住所地ないし本籍地で人物を特定した上、遺言者の死亡以前に先順位の受遺者が死亡したときは、遺贈財産を予備的な受遺者に遺贈する旨記載します。

Q.
負担付遺贈とは何ですか?

A.
遺贈とは、遺言による特定又は包括的割合での財産処分のことをいいますが、これと引き換えに、受遺者に対して一定の義務を負わせることができます。 このような遺贈のことを負担付遺贈といい、具体的には「甲にA不動産を遺贈するかわりに、甲は遺言者の妻乙に対し、その生活費として、毎月5万円を支払う」というものです。 負担付遺贈の場合も、受遺者において遺贈を承認するか放棄するかの選択権があるため、自由に遺贈を放棄することができます。 また受遺者の不利益を回避するため、受遺者は遺贈の目的の価額を超えない限度内においてのみ、負担した義務を履行する責任を負うとされています。 負担付遺贈によって受遺者が負担した義務を履行しない場合、 相続人は、 相当の期間を定めて履行の催告を行い、 それでも履行がない場合は、 その負担付遺贈にかかる遺言の取消しを家庭裁判所に対して請求することができます。

Q.
祭祀主宰者の指定とは何ですか?

A.
祭祀財産(系譜、祭具、墳墓)は、その性質上、相続財産として相続人による共有ないし遺産分割の対象とならず、祖先の祭祀を主宰すべき者が単独承継することとなります。 祭祀主宰者の決定は、 第1に、被相続人が指定した者、第2に、 指定がないときは慣習に従い、 第3に、 慣習が不明なときは家庭裁判所が定めることになります。 被相続人が祭祀主宰者を指定することができますが、その方式については、特に規定されていません。 よって、生前行為によっても遺言によっても祭祀主宰者の指定をすることは可能で、生前行為による場合には、口頭、書面を問わないことになります。 もっとも、指定意思の明確化及び祭祀主宰者の特定のため、人物の氏名、生年月日、本籍地ないし住所地を文書に明記するべきでしょう。

Q.
遺言による未成年後見人の指定とは何ですか?

A.
民法は未成年者保護のため、親権者の規定を定めています。親権者とは通常、未成年者の父母のことであり、未成年者の監護、教育、財産の管理、代表等を行います。 親権者が存在しない、あるいは親権者が管理権を有しない場合には、未成年者保護のため、未成年後見人が選任されて、未成年者の監護、教育、財産の管理、代表等を行うことになります。 なお、未成年後見人は1人でなければならないとされています。 未成年者に対して、 最後に親権を行う者で、かつ管理権を有するものは、遺言で未成年後見人を指定することができます。 未成年後見人の指定は遺言によってのみなすことができるとされています。 最後に親権を行う者が遺言で未成年後見人の指定ができるとされているため、例えば、父母の共同親権に服している未成年の子については、 父母はいずれも遺言で、未成年後見人を指定する資格はないことになります。

Q.
遺言による未成年後見監督人の指定とは何ですか?

A.
親権者が存在しない、あるいは親権者が管理権を有しない場合には、未成年者保護のため、未成年後見人が選任され、未成年者の監護、教育、財産の管理、代表等を行うことになります。 未成年後見人の権限が多岐にわたることから、その監視者を任意に設けることができます。 この監視者のことを未成年後見監督人といい、未成年後見人の不正を発見した場合にはその解任を請求する権利を有しています。 未成年後見人は1人でなければなりませんが、未成年後見監督人は複数選任することが可能です。 未成年者後見人を指定することが出来る者は、遺言で未成年後見監督人を指定することができるとされています。 すなわち、未成年者に対して、 最後に親権を行う者で、かつ管理権を有するものが、未成年後見監督人の指定を行うことができます。 未成年後見監督人の指定は遺言によってのみなすことができるとされているため、遺言者が未成年後見監督人を指定する場合、同一の遺言で未成年後見人の指定も行っておくことが通常です。 最後に親権を行う者が遺言で未成年後見監督人の指定ができるとされているため、例えば、父母の共同親権に服している未成年の子については、 父母はいずれも遺言で、未成年後見監督人を指定する資格はないことになります。

Q.
遺言による認知とは何ですか?

A.
認知とは、婚姻関係にない男女間に生まれた子について、父親が自分の子であることを認めることをいいます。母子関係は分娩の事実によって当然に生じますが、父子関係は認知によって生じます。 認知は生前行為によっても、遺言によってなすことも可能です。 生前行為による場合は戸籍法の定めに従って父親が届出を行います(戸籍法60条、61条)。 遺言による認知を行った場合には、遺言執行者が認知の届出を行います。 そのため、遺言で遺言執行者の指定ないし指定の委託を行うか、遺言者の死後に、家庭裁判所で遺言執行者を選任する必要があります。 遺言執行者は就任の日から10日以内に、遺言の謄本を添付した上で、認知の届出を行わなければなりません(戸籍法64条)。

Q.
遺言による推定相続人の廃除・廃除の取消しとは何ですか?

A.
廃除とは、遺留分を有する推定相続人(兄弟姉妹以外の法定相続人)が被相続人に対する虐待や侮辱等を行ったため、被相続人がその者の相続権を剥奪したいと考える場合に、その者の相続権を剥奪することです。 廃除の取消しとは、被相続人が行った廃除の効果をなかったものにする制度です。 家庭裁判所で審理がなされ、廃除を認める審判が下されたり、廃除を認める調停が成立すると、廃除された相続人は相続権を失います。廃除や廃除の取消しは、生前行為によっても、遺言によってもなすことが可能です。 遺言による廃除や廃除の取消しを行った場合には、遺言執行者が家庭裁判所にそれらの請求を行います。 そのため、遺言で遺言執行者の指定ないし指定の委託を行うか、遺言者の死後に、家庭裁判所で遺言執行者を選任する必要があります。 遺言執行者は審判確定から10日以内に、審判書の謄本を添付した上で、廃除または廃除の取消しの届出を行わなければなりません(戸籍法97条、63条)。

Q.
相続分の指定又は指定の委託とは何ですか?

A.
民法は、相続人の種別や順位に応じて法定相続分の規定を設けています。 しかし、被相続人は、遺言で、 共同相続人の相続分を定め、 またはこれを定めることを第三者に委託することが認められています。 相続分の指定は一部の共同相続人に対してのみ行うことも可能で、指定が無かった相続人の相続分は、残余を法定相続分で分割します。 相続分の指定や指定の委託は遺言によって行わなければならず、 生前行為によってなすことは認められません。 相続分の指定は、各相続人についてそれぞれ何分の1と明記します。 相続分の指定の委託は、受託者を氏名、生年月日、本籍地や住所地で特定した上で、この者に対して相続分の指定を委託する旨明記します。 受託者において、相続分の指定を拒否することは可能であり、その場合は、相続分の指定を委託した遺言の効力は失効し、法定相続分によることとなります。 指定相続分が相続人の遺留分を侵害する場合には、遺留分権利者による遺留分減殺請求によって、相続分の指定の効力が覆されることがあります。

Q.
遺産分割方法の指定又は指定の委託とは何ですか?

A.
民法は共同相続人による遺産分割の規定を設け、裁判外の遺産分割協議、家庭裁判所での遺産分割調停や遺産分割審判という手続が存在します。 これらの協議や手続において、各相続人が財産を配分する遺産分割方法が具体的に決定されることとなります。 一方、被相続人は、 遺言で遺産分割の方法を定め、 もしくはこれを定めることを第三者に委託することができます。 遺産分割方法の指定や指定の委託は、遺言によって行わなければならず、生前行為によってなすことは認められません。 「甲には不動産を、 乙には預貯金及び現金を相続させる」 というように、 分割の具体的な方法、 すなわち、 各相続人の取得すべき遺産を具体的に定めます。 また、 上記のように個々の財産をその性質や形状を変更することなく相続人に配分する方式の現物分割、 「甲には全ての財産を相続させる代わりに、甲は乙に対して金●万円を支払う」といった相続人の一部にその相続分を超える財産を取得させ、 他の相続人に対し債務を負担させる方式の代償分割、 「不動産を売却して、その売却金は甲乙各2分の1を取得する」といった遺産を換価処分してその価額を分配する方式の換価分割、 いずれによるべきかの指定も可能です 遺産分割方法の指定の委託は、受託者を氏名、生年月日、本籍地や住所地で特定した上で、この者に対して遺産分割方法の指定を委託する旨明記します。 受託者において、遺産分割方法の指定を拒否することは可能であり、その場合は、遺産分割方法の指定を委託した遺言の効力は失効し、相続人の協議や遺産分割審判によって、その分割方法が決定されることとなります。

Q.
遺言による遺贈の減殺方法の指定とは何ですか?

A.
民法では、遺留分減殺請求において、遺贈は、それぞれの目的の価額の割合に応じて減殺することが規定されています。 すなわち、遺贈が複数存在する場合には、特定の遺贈から順次減殺を行っていくのでなく、全ての遺贈を対象として、その価額の割合に応じた割合的減殺を行うこととなります。 例えば、甲の遺留分侵害額が1000万円で、乙へ遺贈されたA不動産が4000万円、丙へ遺贈されたB不動産が1000万円という場合、Aから800万円を、Bから200万円を減殺する、すなわち、甲はA、B各5分の1の持分移転登記を請求することになります。 被相続人は、遺言によって、この遺贈の減殺方法を指定することができます。減殺方法の指定は遺言によって行わなければならず、 それ以外の生前行為で指定することは認められません。 指定の方法としては、減殺すべき金額を遺贈ごとに指定したり、各遺贈に対する減殺の順番を指定したりすることが考えられます。 例えば、前記の例で各遺贈財産について同額の減殺を指定した場合、甲はA、Bから各500万円を減殺します。すなわち、甲は乙に対してAの8分の1の持分移転登記、丙に対してBの2分の1の持分移転登記を請求します。 一方、Aのみからの減殺を指定した場合は、甲はAから1000万円を減殺します。すなわち、乙に対してAの4分の1の持分移転登記を請求することになります。

Q.
遺言による相続人の担保責任の指定とは何ですか?

A.
各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負うと規定されています(民法911条)。 具体的には、遺産分割で財産を取得したものの、その財産が他人の物であったり、数量不足であったり、他人の権利が付着していたり、隠れた瑕疵があったりしたような場合に、その相続財産を取得した相続人を保護するため、他の相続人に対して、損害賠償請求や解除を求めることができるというものです。 被相続人は、遺言によって、この相続人の担保責任を指定(変更)することができます。担保責任の指定は遺言によって行わなければならず、 それ以外の生前行為で行うことは認められません。 指定の具体的内容として、相続人の担保責任を免除、減免することは自由ですが、担保責任を加重する結果、一部の相続人の遺留分を侵害する場合には、遺留分減殺請求の対象となると解釈されています。 例えば、甲、乙、丙がいずれも同順位の相続人で、遺産分割によって甲が1000万円の不動産、乙が1000万円の有価証券、丙が1000万円の預貯金を取得したものの、不動産に隠れた瑕疵があってその価値が真実は500万円しかなかったという場合、 甲は乙、丙に対して各250万円の担保責任を負うのが原則です。 ところが、遺言で相続人の担保責任を一切免除すると規定した場合、乙丙は担保責任を負わないため、甲は一切の請求をすることができません。また、乙のみが担保責任を負担すると規定した場合、甲は乙に対して、500万円の請求をすることができます。

Q.
遺言による遺言執行者の指定又は指定の委託とは何ですか?

A.
遺言が効力を生じた場合に、何らかの行為を行うことを「遺言執行」と呼び、具体的には、認知の届出、家庭裁判所に対する推定相続人の廃除又は廃除の取消しの請求、財産移転や名義変更などがあります。 遺言執行を行う者のことを遺言執行者と呼びます。 遺言者は遺言で、 1人または数人の遺言執行者を指定し、 または指定を第三者に委託することができます。 遺言執行者の指定や指定の委託は必ず遺言によらなければならず、他の生前行為によってなすことはできません。 遺言者の死亡により、遺言執行者指定の遺言が効力を生じても、 指定された者には遺言執行者となるか否かの諾否の自由があり、 指定された者が承諾することによって遺言執行者に就任します。 一方、相続人その他の利害関係人は、 相当の期間を定めて、遺言執行者に指定された者に対し、遺言執行者への就任を承認するか否か確答すべきことを催告することができ、 その期間内に指定された者が確答しなかったときは、遺言執行者への就任を承諾したものとみなされます。このように、遺言によって決定される遺言執行者を指定遺言執行者と呼びます。

Q.
遺言で遺留分や遺留分減殺請求について変えることはできますか?

A.
そもそも遺留分の制度は、遺留分権利者保護のために、生前贈与や遺言による被相続人の財産処分を制限するものです。 よって、遺留分権利者や遺留分割合について民法と異なる遺言を行ってもその効力は認められません。 民法上、遺留分の減殺は、時間的に新しいものから行うことが規定されています。すなわち、遺贈→新しい生前贈与→古い生前贈与の順で減殺対象物が決定されていくこととなります。 これは、被相続人から財産を取得した者の取引の安全を考慮して、遺留分減殺の対象をなるべく直近の贈与(遺贈)に限定するという趣旨の規定です。 よって遺言で、減殺順序の変更を指定した場合でも、その効力は認められません。 民法上、遺贈は、その目的物の価額の割合に応じて減殺するという規定が存在します。 すなわち、遺贈された財産Aが10という価額、財産Bが5という価額の場合には、A、Bに対して2対1の割合で減殺がなされるということです。遺留分侵害額が300万円の場合には、Aから200万円、Bから100万円(ないしそれに相当する持分)を減殺します。 この減殺割合については、遺言で異なる定めをすることが認められており、前記の例で被相続人がAからのみの減殺を指定していた場合には、Aから300万円(ないしそれに相当する持分)を減殺します。

Q.
遺言書はどのように保管しますか?

A.
遺言を作成しても、その遺言書が相続人らに発見されなければ、法定相続が開始してしまいます。また、相続人全員が遺産分割を行った後になって遺言書が発見された場合には、錯誤を理由に遺産分割が無効となる可能性もあります。 一方、遺言書を容易に発見できる場所に保管した場合、利害関係人による偽造、変造の危険性が生じます。 公正証書遺言は、遺言書の原本が公証人役場に保管されるため、偽造、変造、紛失のリスクが事実上ありません。また、保管のための手数料もかからないというメリットがあります。 相続人側においても、被相続人の死後に、公証人役場で公正証書遺言の有無を検索することができます。 遺言者が自らの責任と費用で遺言書の原本を保管する必要があります。 遺言書を遺言者の手元に保管する以外の方法としては、 下記が考えられます。
(1)法律事務所・司法書士事務所に保管を依頼する
(2)貸金庫に保管する
(3)信託会社等の遺言信託サービスを利用する
(4)遺言執行者に保管を委託する

Q.
公正証書の保管期間について教えてください。

A.
公正証書の原本の保管期間は、原則として20年間と規定されています(公証人法施行規則27条1項)。 公正証書遺言の保管もこの規定に従うため、20年間は公証人役場にその原本が保管されます。 前述の保管期間が満了した後でも、特別の事由により保存の必要がある場合は、その事由のある間は保存しなければならないという規定が存在します(公証人法施行規則27条3項)。 遺言は、遺言者の死亡時に効力を生じますから、公正証書遺言は遺言者の死亡時点まで保管しておく必要がある文書といえます。 そのため、実務の対応としては、20年間経過後も公正証書遺言の原本を保管しているのが通常です。 具体的な保管期間については、各公証人役場で取扱いが異なるため、若年者が遺言を行う場合には事前に確認しておくほうがよいでしょう。

Q.
公正証書遺言を検索するシステムはありますか?

A.
公正証書遺言は、作成後、正本及び謄本を遺言者に交付し、原本を公証人役場に保管します。 相続人は、被相続人の遺言の有無やその保管場所を調査する必要があります。 公正証書遺言については、公証人役場での検索、照会システムが存在し、以下のような手順で被相続人の遺言の有無を照会することができます。 なお、検索、照会はどこの公証人役場からでも依頼できます。
(1) 除籍謄本、戸籍謄本等、被相続人が死亡したこと、及び照会者が相続人であることを証明する資料を準備します。
(2) これらの資料を公証人役場に持参して、遺言の検索、照会手続を行います。公証人役場はどの公証人役場でもかまいません。
(3) 手続後に、公証人が、日本公証人連合会事務局に対して、被相続人の氏名や生年月日等の情報によって、公正証書遺言の有無、保管場所を照会します。
(4) 依頼を受けた日本公証人連合会事務局は、検索を行い、その結果を公証人に対して回答します。
(5) 公証人から照会者に対し、公正証書遺言の有無とその保管場所(公証人役場)が伝えられます。
(6) その後、相続人において、公正証書遺言が現実に保管されている公証人役場に対して遺言書の謄本交付手続を行います。

Q.
遺言書の開封とは何ですか?

A.
封印のある遺言書は、 家庭裁判所において、相続人又はその代理人の立会のもと開封することが規定されています(民法1004条)。 この規定に反して、家庭裁判所外において遺言書を開封した者は5万円以下の過科に処せられます。 家庭裁判所での開封手続を規定した理由は、遺言書の変造を可及的に防止し、公正な遺言の執行を実現するためです。 なお、開封手続の有無は遺言の効力そのものには影響を与えません。 家庭裁判所での開封手続の対象となる封印のある遺言書とは、 封に印が押捺されている遺言書をいいます。 単に封入された遺言書はこれに含まれません。 秘密証書遺言は、封印することがその有効要件とされていますから、 常に開封手続を要します。 一方、公正証書遺言は常に開封手続を要しません。 実務上は、 開封と検認とが同一手続で行われるのが一般的です。 家庭裁判所は、提出された戸籍謄本によって相続人を確認した上、 検認、開封期日を定めて、 相続人ないしその代理人に検認、開封期日呼出状を送達します。 なお、呼出状が送達されれば、期日に相続人の立会がなくとも、開封、検認手続は実施できます。

Q.
遺言書の検認とは何ですか?

A.
遺言書の保管者又は遺言書を発見した相続人は、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、 その検認を請求しなければならないと規定されています(民法1004条)。 この規定に反して、家庭裁判所において遺言書の検認を行わなかった者は5万円以下の過科に処せられます。 家庭裁判所での検認を規定した理由は、遺言書の変造を可及的に防止し、公正な遺言の執行を実現するためです。 なお、検認手続の有無は遺言の効力そのものには影響を与えません。 公正証書遺言以外の全ての遺言書が検認の対象となります。 検認の申立は、 相続開始地 (被相続人の住所地) の家庭裁判所に対して行います。 家庭裁判所は、提出された戸籍謄本によって相続人を確認した上、 検認期日を定めて、 相続人ないしその代理人に検認期日呼出状を送達します。 なお、呼出状が送達されれば、期日に相続人の立会がなくとも、検認手続は実施できます。 期日において、遺言書の方式及び遺言書の事実状態を調査した上で、検認調書を作成します。遺言書には、検認証明が付されることになります。

Q.
遺言の解釈とは?

A.
遺言の解釈が必要となった時点では、 既に遺言者が死亡していることが多いため、 その真意を遺言者に確認することが不可能な場合がほとんどであるといえます。 遺言の解釈をどのように行うべきかが問題となりますが、それについて総論的な見解を示した、以下の判例が存在します。 最高裁昭和58年3月18日判決 遺言の解釈は、 遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、 遺言者の真意を探究すべきであり、 遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、 単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出してその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、 遺言書の全記載との関連、 遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究して当該条項の趣旨を確定すべきであると解するのが相当である、 とされています。 このような視点に立てば、例えば、ある遺言条項のみでは、遺贈財産や受遺者の特定ができない場合でも、直ちにその条項を無効にするのではなく、他の全記載や遺言作成時の状況を考慮して特定が可能な場合には、その遺言条項を有効と扱って、遺言者の真意を可能な限り実現すべきことになるでしょう。

Q.
遺言書に「相続させる」と記載されている場合は?

A.
実務上、相続人に対して財産を承継させる場合には、財産を「遺贈する」という表記ではなく、「相続させる」という表記が通常です。遺言者は、遺産分割方法の指定、遺贈、相続分の指定を行うことによって、財産の承継方法を決定することができます。この場合の解釈について、最高裁平成3年4月19日判決があります。 遺産を特定の相続人に 「相続させる」 遺言は、 遺言書の記載から、 その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情のない限り、 その遺産について、相続人に単独で取得させる旨の遺産分割の方法が指定されたものであると解釈すべき旨判示しています。 そして、 「相続させる」遺言があった場合には、 相続によるその遺産の承継を相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、 何らの行為を要せずして、 被相続人の死亡の時に直ちに承継される、と結論付けました。 したがって、遺言で、特定の相続人に対して遺産を「相続させる」遺言がされた場合、それは遺産分割方法の指定として、何らの行為を要さず、被相続人の死亡の時に直ちにその遺産が相続人に単独で承継されます。 かつ、その遺産については、相続人単独で、相続を登記原因とする所有権移転登記を申請することができます。

Q.
「相続させる」遺言がある場合、登記はどのように行いますか?

A.
「遺贈させる」と記載されている場合には、遺言者の承継人(相続人)が、受遺者に対して、財産、名義を移転する義務を負います。 そのため、遺贈財産について遺贈を原因とする所有権移転登記を行う際には、登記権利者が受遺者、登記義務者が相続人ないし遺言執行者となり、双方が共同して登記申請を行わなければなりません。 一方、「相続させる」遺言がある場合、財産の承継を指定された相続人は、被相続人の死亡時に、直ちに遺産を単独承継することとなるため、その相続人単独で相続を登記原因とする所有権移転登記を申請することができます。登記申請に際しては、遺言書のほか相続を証する書類(戸籍、除斥謄本)を添付します。 なお、「相続させる」遺言による単独登記申請は、登記実務上は古くから行われています(昭和47年4月17日法務省民事局長回答、1441号)。 遺言執行者による登記 「相続させる」遺言の場合、相続人単独での登記申請ができるため、たとえ遺言で遺言執行者が定められている場合であっても、遺言執行者がその相続人にかわって登記申請を行うことはできません(最高裁平成7年1月24日判決)

Q.
自筆証書遺言の筆跡が遺言者本人のものかどうか疑わしい場合には、どうすればよいですか?

A.
自筆証書遺言は、遺言者の自書の要件を欠けば、遺言としての効力は生じません。 よって、筆跡が疑わしいことを理由に遺言の効力を争いたいと考える場合には、遺言無効確認訴訟を提起することとなります。 この裁判での争点は、遺言者が遺言書を自書したかどうかという点に集約されます。 自書性の検証の方法としては、筆跡鑑定が中心となるほか、生前の遺言者の言動等から推認される遺言者の意思からして、遺言書に記載された内容が不自然でないかという点についても考慮されることがあります。 筆跡鑑定の前提として、遺言者が自書を行った他の資料(日記や書簡等)が必要となりますので、これらの資料を収集しておく必要があります。

Q.
遺言の効力はいつ発生しますか?

A.
遺言は、遺言者が民法等に規定されている方式に従って遺言書を作成することによって成立します。遺言は、相手方が存在する契約とは異なり、遺言者が一方的に行うことができる単独行為とされています。 その遺言の効力は、遺言の成立時でなく、遺言者の死亡の時から発生するとされています(民法985条)。 遺言は、遺言者の最終の意思を尊重する制度であるため、遺言の成立時にその効力の発生を認めてしまうと不都合が生じるからです。 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、遺言の全部又は一部を撤回することができます。 また、遺言で財産承継の方法を規定した場合でも、その後、その遺言内容と異なる生前処分を行うことは自由です。その場合、生前処分と抵触する部分について遺言を撤回したものとみなされます。 遺言者の生前には遺言の効力が未だ生じないため、遺言者の生前には、遺言書に基づいて一切の権利を主張することはできません。

Q.
複数の遺言書が存在する場合に、その優劣はどうなりますか?

A.
遺言者は、何回でも遺言を行うことができるため、遺言者の死後になって複数の遺言書が発見されると、どの遺言書が優先するのかが問題となります。 もっとも、遺言は要式行為ですから、発見された複数の遺言書について、それぞれが、遺言の形式を遵守しているかをまず確認する必要があります。 形式を満たしていない遺言書は、そもそも法律上の遺言とはいえないため、遺言の優劣に関して考慮を行う必要がありません。 遺言者には、遺言撤回の自由があり、後の遺言によって、前の遺言の全部又は一部を撤回することができます。 「前の遺言を撤回する」と明記されていない場合でも、前の遺言と後の遺言が抵触する場合には、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます。 以上より、複数の遺言書が存在する場合、その優劣は、作成日の前後によって決することとなります。これは、各遺言の方式を問いません。

Q.
遺言を撤回することはできますか?

A.
撤回とは、特段の理由なく、撤回者の一方的な意思によって、法律行為をなかった状態に戻すことをいいます。 遺言者は、いつでも遺言の方式に従って、 その遺言の全部又は一部を撤回することができます (民法1022条)。 遺言は、 遺言者の最終意思に法律上の効力を認めようとする制度です。 遺言者が死亡する瞬間にその意思を明らかにすることは不可能であるため、 遺言者が生前に遺言という形で意思を明確にして、 遺言者が死亡した場合にはその遺言内容を遺言者の最終意思と認めることになります。 遺言者の意思は不変のものでなく、遺言の作成後に変化するため、いつでも翻意して遺言を撤回することが認められています。遺言を撤回する権利は、放棄することはできません 遺言の撤回は自由ですが、遺言の方式に従う必要がある点には注意が必要です。もっとも、方式さえ遵守すれば、例えば公正証書遺言を自筆証書遺言によって取消すということも可能です。 前の遺言と後の遺言と抵触するときは、 その抵触する部分については後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます。 遺言者が、遺言後に遺言内容と異なる生前処分や法律行為を行った場合は、抵触する部分について遺言を撤回したものとみなされます。 遺言者が故意に遺言書を破棄した場合、 遺言を撤回したものとみなされます。

Q.
遺言が無効となったり取消されたりすることはありますか?

A.
下記のような場合、遺言は無効になります。
(1) 遺言が方式を欠くとき
(2) 遺言者が遺言年齢 (満15歳) に達していないとき
(3) 遺言者が遺言の真意を欠くときや意思能力(遺言能力)を有しないとき
(4) 遺言の内容が法律上許されないとき
例えば、公序良俗(民法90条)に反する遺言内容、 受遺欠格者 (民法965条が準用する891条) に対する遺贈です。 (5) 被後見人が後見の計算の終了前に後見人又はその配偶者もしくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたとき(民法966条) があります。
高齢化社会が進むことで老人性痴呆が増加し、遺言者が意思能力がないとして遺言の効力が争われるケースが増えております。遺言書の作成は、遺言者が健康な状態で早めに済ませるべきですし、形式も公正証書によるべきでしょう。自筆遺言と異なり、公正証書であれば、公証人が遺言者本人と面談し、その際に遺言者の意思能力を確認していますから遺言無効ということは通常起こりません。しかし場合によっては、遺言者がにこやかに公証人に接していたり、あるいは公証人の質問が理解できないけれども理解していないことを悟られまいとして「そうです」と答えている場合があります。このような場合に、数分の面接をしただけの公証人には、遺言者の意思能力の有無・程度を正確に判断できないこともあります。判例上も公正証書遺言が意思能力の欠如により遺言無効とされた例があります。 遺言の取消しとは、取消事由が存在する場合に、遺言者の一方的な意思によって取消しを行い、遺言をなかった状態にもどすことをいいます。遺言については、 行為無能力に関する規定の適用はないため、未成年者や制限能力者が、行為無能力を理由とする取消はできません。 よって、詐欺や強迫によってなされた遺言についてのみ、 取消すことができます。

Q.
遺言書に記載されている財産が既に処分されていたとき、その遺言書の効力はどうなりますか?

A.
遺言者が、遺言書に財産処分の方法(遺贈や遺産分割方法の指定)を記載した場合でも、その財産を生前に処分することができます。 遺言は遺言者の最終意思を尊重する制度ですから、遺言作成後に遺言者が翻意して遺言内容と異なる財産処分を行うことは自由であるからです。 そこで、遺言と異なる生前処分がなされた場合の、当該遺言条項の効力や他の遺言条項への影響が問題となります。 遺言後に遺言と異なる生前処分がなされた場合は、その生前処分によって、遺言内容と抵触する部分については、遺言を撤回したものとみなされます。 よって、生前処分と抵触する遺言条項のみが撤回されたこととなり、他の遺言条項については影響を与えないことになります。 なお、遺言で財産の獲得が予定されていた受遺者や相続人といえども、遺言の効力発生前には一切の権利を取得しないため、遺言者の生前行為について異議を申し立てることはできません。

Q.
遺言の効力を争う手段について教えてください。

A.
遺言の効力を争う方法として、遺言無効確認訴訟という訴訟類型(形成訴訟)が認められています。 遺言の有効無効は訴訟事項であるため、管轄は家庭裁判所でなく、地方裁判所となります。 訴訟では、遺言の利害関係人を当事者とする必要があり、法定相続人のほかに受遺者も被告に加える必要があります。 遺言の無効事由や取消事由ごとに裁判での争点は異なることとなります。 例えば、自筆証書遺言の自書の要件が争われている場合には、遺言者の自書した他の文書との筆跡の対照を行ったり、専門家による筆跡鑑定を行うことが考えられます。 遺言者の意思能力(遺言能力)が争われている場合には、遺言者の生前の医療記録の吟味を行ったり、専門家による精神鑑定を行うことが考えられます。

Q.
遺言執行とは何ですか?

A.
遺言事項に付随して何らかの行為を行うことを「遺言執行」と呼び、遺言執行を行うことを委託された者を遺言執行者と呼びます。 遺言執行の主な内容は下記のとおりです。
(1) 認知
遺言による認知がなされている場合、 遺言執行者は、 就職の日から10日以内に戸籍上の届出をしなければなりません (戸籍法64条)。
(2)廃除やその取消
遺言による相続人の廃除および廃除の取消については、 遺言執行者が、その請求を家庭裁判所になし、 確定後に戸籍上の届出をする必要があります (戸籍法97条、 63条1項)。
(3)財産の移転
遺言執行者は、不動産、有価証券の引渡し、預貯金の払戻し等の事実行為を行って、受遺者に財産を移転させる必要があります。
(4)財産の名義移転
遺贈された不動産について、遺言執行者は登記義務者となり、受遺者との共同申請によって名義移転手続を行います。
(5)訴訟追行
遺産や遺言執行に関する訴訟が提起された場合には、遺言執行者が訴訟当事者となります。

Q.
遺言執行に関する費用について教えてください。

A.
遺言執行に伴い、通常は何らかの費用が発生しますが、その費用は、相続財産から負担することとされています(民法1021条)。すなわち、遺言執行者は、遺言執行費用を相続財産から控除した上で、残余を相続人に分配します。 実務の運用として、遺言執行者が遺言執行費用相当額を相続人から別途預かった上で、その中から執行費用を支弁し、相続財産からの控除は行わないという方式がとられることもあります。
遺言執行費用として考えられるものは、下記があります。
(1)遺言書の開封、検認手続費用
(2)財産目録調整費用
(3)相続財産の管理費用
(4)相続財産の移転費用や売却手数料
(5)相続財産の名義変更費用
(6)遺言執行者の報酬

Q.
遺言執行者が複数人いる場合に、遺言執行はどのように行いますか?

A.
遺言執行者に人数制限は設けられておらず、1名でも数名でも遺言執行者を指定したり、選任したりすることが認められています。 遺言執行者が複数存在する場合には、遺言執行をどのように行うべきかが問題となります。 遺言者が、遺言によって、各遺言執行者の職務分担を定めている場合には、その遺言条項に従うこととなります。 例えば、認知手続を遺言執行者甲に行わせ、遺贈手続を遺言執行者乙に行わせるという遺言を作成した場合です。 遺言に各遺言執行者の職務分担の定めがない場合、遺言執行は遺言執行者の過半数で決定することになります(民法1017条)。 ただし、保存行為(遺産の妨害排除や修繕、時効の保全)については、各遺言執行者が単独で行うことができます。

Q.
遺言執行者を選定することは可能ですか?

A.
遺言による推定相続人の廃除やその取消しがなされている場合、家庭裁判所に対する請求手続は遺言執行者が行わなければなりません(民法893条、894条)。 遺言による認知がなされている場合、遺言執行者がその届出を行わなければなりません(戸籍法64条)。 このような遺言がなされたり、あるいは、遺言の執行にあたり相続人全員を当事者とすることが面倒で、円滑な執行のために遺言執行者を指定しておく必要があると考えられるにもかかわらず、遺言で遺言執行者の指定や指定の委託がなされていない場合には、どのような手続をとればよいのかが問題となります。 遺言執行者がないときや、亡くなったときは、家庭裁判所は利害関係人の請求によって遺言執行者を選任することができます。 選任手続は以下のとおりです。
(1) 利害関係人(相続人、 受遺者、 これらの者の債権者または不在者財産管理人、 相続債権者および相続財産管理人等)が、相続開始地の家庭裁判所に対して遺言執行者選任の申立を行います。
(2) 家庭裁判所は、遺言執行者選任の審判において、遺言の内容から遺言の執行を必要とするかどうか、遺言執行者を選任すべきか、誰が遺言執行者にふさわしいかを審理します。
(3) 家庭裁判所は、遺言執行者の候補者となる者の意見を聴く必要があります (家事審判規則125条)。 このように、家庭裁判所によって選任された遺言執行者を、選定遺言執行者と呼びます。

Q.
遺言執行者になれないのは誰ですか?

A.
この遺言執行者には、一定の資格を要するのかが問題となります。 未成年者、破産者は遺言執行者となることができないとされています(民法1009条)。 遺言執行は、身分上、財産上の行為を取り扱い、相応の判断力や、財産管理能力が要求されるため、このような欠格事由が設けられています。 なお、遺言の効力は遺言者の死亡時に発生するため、遺言執行者の欠格事由は、遺言者の死亡時を基準にして判断します。 すなわち、遺言作成時には、未成年者を遺言執行者として指定した場合でも、遺言者の死亡時に、その者が成年に達していれば、欠格事由には該当しません。 一方、遺言作成時には、遺言執行者として指定された者が破産者でなかったものの、遺言者の死亡時に破産者となってしまった場合には、その者は欠格事由に該当することになります。

Q.
遺言執行者への報酬はどのように決めるのですか?

A.
遺言執行には、時間や労力、法律的知識を要するが多く、遺言執行者の職務の対価として何らかの報酬が支払われることが通常です。 この報酬はどのように決定されるのかが問題となります。 遺言執行者に対する報酬は、 遺言に記載があれば、その内容に従います。 遺言に記載がない場合には、相続人全員と遺言執行者との協議で決定することとなります。 協議が整わないときは、相続財産の状況、 その他の事情(執行行為の複雑性や、執行行為に要した時間等)を考慮して家庭裁判所が決定します (民法1018条)。 信託銀行や法律事務所に遺言執行を依頼する場合には、事前に報酬を確認しておくとよいでしょう。

Q.
遺言執行者の辞任や解任について教えてください。

A.
ひとたび遺言執行者が指定ないし選任された場合でも、任務の継続が不可能になった場合や、不適切な行為があった場合などに、遺言執行者の辞任や解任が認められています。 遺言執行者は、正当な事由がある場合には、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができます。正当な事由とは、長期間の病気や遠隔地への引越し等、遺言執行が客観的に困難と認められる状態をいいます。 辞任を希望する遺言執行者は、相続開始地の家庭裁判所に対して辞任許可の審判を申し立てる必要があり、その中で正当な事由の有無が判断されます。 辞任に制限が生じるのは、遺言執行者の任務の重要性に鑑み、一方的な辞任によって相続人に不足の損害を与えないためです。 また、遺言執行者が任務を怠ったとき、その他正当な事由があるときは、利害関係人(相続人や受遺者等)が、遺言執行者の解任を家庭裁判所に請求することができます。 解任の事由は、遺言執行者の任務懈怠のほか、一部の相続人のみを有利に取り扱っている場合や、病気等により円滑な遺言執行が期待できないような場合も含まれます。 解任を希望する利害関係人は、相続開始地の家庭裁判所に対して解任の審判を申し立てる必要があり、その中で解任事由の有無が判断されます。 引き続き遺言執行者が必要となる場合には、新たな遺言執行者の選任を家庭裁判所に対して請求することになります。

Q.
遺言者の死亡前に、遺言執行者が死亡した場合にはどうすればよいですか?

A.
遺言の効力は、遺言者の死亡時に発生します。 それゆえ、遺言によって遺言執行者の指定がされたものの、遺言者の死亡前に遺言執行者が死亡した場合には、その遺言条項の効力は失われます。 複数の遺言執行者が指定されている場合には、死亡者以外の者が遺言執行者となって遺言執行を行えばよいのですが、1人のみの指定であった場合、遺言執行者が存在しないという事態が生じます。 その場合、どのような手当てをするべきかが問題となります。 遺言者が新たな遺言を作成して、遺言執行者の再指定や指定の委託を行います。 遺言者の死後に、利害関係人(相続人、 受遺者等)が相続開始地の家庭裁判所に対して遺言執行者選任の申立を行います。 家庭裁判所が必要と認めた場合には、新たな遺言執行者が選任されます。

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