Q&A
任意後見
高齢になるにつれ、将来に様々な不安があるものです。
たとえば、将来に判断能力が低下することにより、

「年金の受け取り、医療費の支払ができなくなったらどうしよう?」
「高齢者を狙った、振り込め詐欺、リフォーム詐欺の被害に合わないだろうか?」
「跡取りがいない会社を整理することができるだろうか?」
「不動産、株式などの財産の管理が心配だ」

このような場合、任意後見制度の利用をお勧めします。任意後見制度は、元気なうちに自分の信頼する人を、後見人候補者として決めることができますので、万一の場合に備えることができます。 たとえば、元気なうちに、年金の受け取り、入院の手続き、病院への支払、介護サービス利用のなどの契約に関すること、財産管理などについて、任意後見契約で決めておけば安心です。 身寄りのない方だけではなく、ご家族に迷惑をかけたくないという方にも有益な制度です。 さらに、継続的な相談や見守り支援などを含めた委任代理契約を合わせて行うことで、後見への移行をスムーズにし、より安心です。
任意後見契約は、様々な必要に合わせて、オリジナルなプランを作ることが可能です。
たとえば、任意後見契約をするかどうか迷っているが、見守り契約だけはしておきたいなど1つだけを選択して、 将来付け加えたり変更したりすることができます。 当事務所では、ご依頼者の意向を最大限に汲んだ契約内容にするため複数回の面談を実施することとしています。その中ではご依頼者のライフプランや好みなどについてもお伺いし、きめ細やかなサポートができるよう努力しています。
見守り契約
ご本人様と定期的に連絡を取ることで、健康や生活の状態に変化がないかを見守ります。健康状態に変化が生じた場合には、ただちに契約で定められた手続きをとります。
財産管理の委任契約
身体の自由が利かなくなり、財産の管理ができなくなってしまったような場合、ご本人様に代わって財産の管理を行います。財産の管理の中には、入院費の支払い、家賃の支払い、親族への仕送り、年金・家賃収入・投資収益の受領などを含みます。
任意後見契約
ご本人様の判断能力が衰えてしまった後に、当事務所に代わって行って欲しい内容を契約で定めて公正証書に作成しておきます。その後、判断能力が衰えた時に、当事務所が家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てます。任意後見監督人が選任されると、当事務所が契約内容にしたがってご本人様を代理して行為を行ったり、財産を管理したりします。任意後見監督人とは、任意後見人を監督する立場にある人のことです。
死後事務委任契約
ご本人様が亡くなられた後に、当事務所が契約内容にしたがって、ご本人様の身辺整理や葬儀の手配を行います。
報酬規程
任意後見契約,財産管理,身上監護契約の契約締結までの調査及び契約書作成の手数料
5万2500円から21万円の範囲内の額(但し,特殊な事情がある場合等,費用の増額があり得る。)
任意後見又は財産管理,身上監護の報酬は原則次のとおり。
依頼者が日常生活を営むのに必要な基本的な事務処理を行うとき
月額5,250円から10万5000円の範囲内の額。
依頼者が日常生活を営むのに必要な基本的な事務処理に加え,収益不動産の管理その他の継続的な事務処理を行うとき
月額3万1500円から10万5000円の範囲内の額。
任意後見契約又は,財産管理・身上監護契約した後,その効力が発生するまでの間,依頼者の事理弁識能力を確認するなどのために訪問して面談する時の手数料。
1回あたり5,250円から3万1500円の範囲内の額。
任意後見Q&A
Q.
成年後見の目的は何ですか?

A.
成年後見の制度は大きく二つ分けて2つあります。 1つは、民法で定められた、後見、保佐、補助の三制度(法定成年後見)であり、もう一つは「任意後見契約に関する法律」で定められた任意後見の制度です。 成年後見は、必ずしも高齢者のみに限定されませんが、判断能力の衰えた人は契約等の法律行為を有効にすることができません。 また、財産管理や身上監護に不安を抱えています。そこで、判断能力が衰えた成年者の法律行為をサポートするために、成年後見があります。

Q.
法定後見の概略を教えてください。

A.
民法で定められた、後見、保佐、補助の三制度を法定成年後見といいます。これらは、高齢者等の判断能力の減退した人の、契約等の法律行為をサポートする制度です。判断能力の程度に応じて監督者(成年後見人、保佐人、補助人)を家庭裁判所が選任します。 3つの制度は判断能力の減退の度合いに応じて、分類されます。後見の対象となる者を成年被後見人といい、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況」にある者と定義されています。「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く」とは、自分の行為の結果について合理的な判断をする能力のないこと、すなわち意思能力がないことをいいます。「常況にある」とは、終始そのような状況にあることまでは必要ありませんが、時々は通常の精神状態に回復しても多くの場合においてそのような精神状態にあることをいいます。 保佐、補助の制度の対象となる者を被保佐人、被補助人といい、それぞれ「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分」「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分」な者が対象になります。 成年後見人が選任された場合は、後見人が成年被後見人の代理人となります。 そして、もし被後見人が法律行為をした場合には、後見人がこの行為の効果を取り消すことができます。 たとえば、成年被後見人が財産を他人に譲渡したり、高価な物品を購入した場合、成年後見人はこれを取り消し、財産を返還させたり、代金の支払いを拒否することができます。

Q.
以前は禁治産制度や準禁治産制度があったようですが、これらと成年後見との関係はどのようになっているのでしょうか?

A.
禁治産、準禁治産制度は2000年4月から法律の改定により、成年後見に移行しました。禁治産者とは意思決定(自己の財産を管理・処分できる)能力がないと判断され、家庭裁判所から禁治産の宣告を受けた人のことをいいます。準禁治産者は禁治産者ほどではないにしても判断能力が禁治産者に準ずる程度(自己の財産を管理・処分するのに常に援助を必要とする)であるとして家庭裁判所から準禁治産の宣告を受けた人をいいます。 判断能力の程度という点では、禁治産者は3つの法定後見のうち、後見に該当し、準禁治産者は保佐の制度に該当します。補助の制度は、判断能力が不十分ではあるものの保佐人を選任するには至らない程度であり、軽度の認知症などの場合を想定して新しく設けられた制度です。 禁治産・準禁治産制度は名前が差別的であり、手続きが面倒で費用も高額であったため、あまり利用されていませんでした。これに対し、成年後見は心理的な抵抗のない名称となりました。 また、禁治産制度は戸籍に記載されるものでしたが、成年後見は別個の登記制度を設けているため、戸籍に記載されることはありません。

Q.
法定後見の申立は親族以外でもできますか?

A.
後見、保佐、補助などの成年後見を利用するには家庭裁判所の審判が必要です。 それで、家庭裁判所に対し申立をする必要があります。 この申立ができるのは、本人、配偶者、四親等以内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、後見人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人、検察官とされています。 実際の申立は殆どが配偶者や親族によるものです。しかしながら、身よりのないお年寄りなど親族がいない場合もあります。そこで、本人の保護が必要であるにもかかわらず申立権者がいないという場合に備えて、検察官が公益の代表者として申立権者に挙げられています。ただし、現実に検察官による申立がなされることは極めてまれです。 また、判断能力の低下した身よりのないお年寄りなどに対し、福祉を図るために特に必要があると認められるときは、市町村長にも法定後見開始の申立権が与えられています(老人福祉法32条など)。

Q.
成年後見が浪費者を対象者としていないのはなぜですか?

A.
旧法における準禁治産宣告は浪費者をその対象としていましたが、成年後見では浪費者は対象から外されました。 理由の一つは、かつての準禁治産制度では、浪費者に準禁治産宣告を受けさせることが、本人の保護よりも、家族の財産保護や、浪費者に対する制裁的な理由で利用され、本人保護という本来の意図から外れていることが多かったからです。 さらに、浪費者は性格には偏りがあるにしても十分な判断能力を持つので、金銭の使い方等に裁判所が介入することは、市民生活に対する過度な干渉となり不適切であることも理由に挙げられます。 なお、昭和54年以前の民法では、準禁治産者の対象者に「聾者」、「唖者」、「盲者」が規定されていましたが、身体障がい者の差別や取引上の不利益になるとして削除され、成年後見でも対象とされていません。

Q.
3種類の法定の後見は、いずれも本人の同意がなくてもできますか?

A.
後見と保佐の制度は本人の同意がなくても家庭裁判所で後見開始、保佐開始の審判を受けることが可能です。しかし、補助開始の審判には本人の同意が必要です。

Q.
補助開始の審判を申立てる場合に、本人の同意が必要なのはなぜですか?

A.
成年後見では、従来の禁治産・準禁治産制度にはなかった補助という制度が新設されました。補助の対象者は、精神上の障害の程度が軽く、不動産の売買なども単独で有効に行うことが可能です。ただ、本人の利益のために補助人のアドバイスを受けたり、補助人に代理してもらったりすることが必要である特定の法律行為について同意権や代理権を与えるものです。 このように、被補助人の判断能力は減退の程度が比較的、軽度なため、本人以外の者による補助開始の審判は、本人の意思を尊重するため、本人の同意が必要とされています。 なお、同意は審判の要件ですので、補助開始の審判申立の時点ではなく、後日、家庭裁判所が審判をする時に必要になります。

Q.
後見開始の審判を申し立てたにもかかわらず、保佐開始の審判が相当であると判断される場合や、逆に保佐開始の審判を申し立てたにもかかわらず、後見開始の審判が相当であると判断される場合はどのようになるのですか?

A.
3つの法定後見のうち、どの類型に当てはまるかの判断は家庭裁判所が行うため、この判断が申立人の求めた類型と必ずしも一致しないことがあります。 後見開始の審判を申立てたのに、家庭裁判所が保佐開始の審判が相当であると判断した場合は、裁判所は申立の変更や予備的に保佐開始の審判申立をするように促します。多くの場合は、裁判所の指導に申立人は従うものと思われますが、申立人が裁判所の釈明に応じなかった場合でも後見開始の申立は保佐開始の申立を含む関係にあると考えて、家庭裁判所は保佐開始の審判ができると一般的に考えられています。 保佐開始の審判申立に対し、家庭裁判所が後見開始の審判が相当であると判断した場合も、裁判所は申立の変更や予備的に後見開始の審判申立をするように促します。 ここでも、裁判所の指導に申立人が納得せず、申立の変更等をしないことが考えられます。この場合は上記の場合と異なり保佐開始の申立は後見開始の申立を含まない関係にあり、家庭裁判所は申立の範囲を超えた審判(より重度の類型の審判)をすることはできないとされているので、申立は却下されてしまいます。

Q.
法定後見の申立をする場合に費用はどれくらいかかりますか?

A.
成年後見には次の費用が必要です。
1 収入印紙(申立手数料) 800円。
ただし、保佐や補助で代理権や同意権の付与の申立もする場合はそれぞれ800円の追加が必要です。
2 登記印紙(登記費用) 4000円。
3 郵便切手(連絡用) 東京家庭裁判所の場合4300円。申立をする家庭裁判所にご確認ください。
4 鑑定費用  後見と保佐では必要な場合に本人の判断能力を医学的に確認するために医師による鑑定を行うことがあります。裁判所が費用を預かって鑑定医に支払います。鑑定料は事案によって異なりますが、概ね10万円以下です。補助開始の審判の場合は申立段階では必要ありません。

Q.
後見開始の審判の申立があるとき、家庭裁判所はどのような調査をするのでしょうか?

A.
家庭裁判所は、成年後見等の申立てがあると、成年後見等の開始をするかどうかの審判を行います。家庭裁判所は、審判のために、その事件を担当する調査官を決めて、審判に必要な調査を命じます。 調査官による調査は、成年被後見人本人自身に関するものと後見人等の候補者に関するものがあります。
1 本人自身に関する調査
(1)本人の略歴、職歴、病歴、今の生活状況、家庭状況、親族や申立人との関係等
(2)診断書や医師との面談をふまえた、本人の判断能力
(3)本人の資産、収入の内容について、現在誰が、どのように管理しているか
(4)申立てについての本人の意思確認
(5)後見人候補者、保佐人候補者、補助候補者についての本人の意思確認
なお、(4)・(5)については、本人の自己決定の尊重という趣旨から、調査官が本人と面接して丁寧に意思確認します。
2 成年後見人等の候補者に関する調査
(1)本成年後見人等と本人との関係については、利害関係等がないかどうか
(2)後見人候補者等の職業や経歴
(3)成年後見人等が職務を引き受けてくれるかについての意思確認

Q.
後見開始、保佐開始、補助開始の制度は、どのように本人の保護を図るのですか?

A.
家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等(成年後見人、保佐人、補助人)が、本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり、本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって、本人を保護します。ただし、法定後見3類型中、最も権限の強い成年後見人であっても、本人の自己決定の尊重の観点から、日用品(食料品や衣料品等)の購入など「日常生活に関する行為」については、取消すことができません。 より具体的には、成年後見人が選任されることによって、成年被後見人にかわって成年後見人が不動産や預貯金などの財産を管理したり、身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結ぶことができます。また、難しい遺産分割の協議を代わりにすることも可能になります。さらに、悪徳商法の被害にあうといったこともなくなります。

Q.
法定後見の場合、成年後見人、保佐人、補助人にはどのような権限が与えられますか?

A.
成年後見人には、日常生活に関する行為を除き、成年後見人がすべての法律行為に関して、同意権・取消権・代理権を行使します。 保佐人の場合は、民法13条第1項(借財、保証、不動産その他重要な財産の売買等)で規定されている重要な法律行為に関して同意権があります。 また、13条第1項所定以外の行為で家庭裁判所が特に指定した行為がある場合にはこれについても同意権があります。保佐人はこれらの同意のない行為については追認することや取消権を行使することもできます。 しかし、保佐人の代理権は、当事者が申立てた「特定の法律行為」について、審判申立てとは別に代理権付与の審判申立てが必要になります。つまり、保佐人には法律上当然に代理権は付与されておらず、家庭裁判所の代理権付与の審判によって特定の法律行為についての代理権が付与されます。ただし、本人の利害に大きく影響するため、本人の自己決定権を尊重して、代理権付与の申立が本人以外の者によってなされる場合には、本人の同意が必要とされています。 補助人には、特定の法律行為について同意権、取消権、追認権を与えることができます。この同意権の対象となる行為は民法13条第1項の行為の一部に限られます。被補助人は被保佐人より高い判断能力を有しているはずなので同意の対象は、13条第1項の行為の一部に限定されています。 また、補助人には特定の法律行為をするための代理権を、保佐人と同様に付与の審判によって与えることができます。代理権を付与することができる法律行為については制限がないので、不動産の処分をはじめとし、遺産分割協議を行うこと、介護施設に入るための契約など様々なものが対象となり得ます。

Q.
成年後見人、保佐人、補助人にはどのような人が選ばれますか?

A.
成年後見人、保佐人、補助人は、本人のためにどのような保護が必要かを判断して、家庭裁判所が選任します。最高裁のまとめでは、成年後見人の約8割は親族が一番多く選任されており、同時に審判開始の申立人であることもしばしばです。しかし、本人の親族以外にも、司法書士、次いで弁護士の順で多く選任されています。また、成年後見人等は複数選任されることもあります。

Q.
成年後見人になるには特別な資格が必要でしょうか?

A.
成年後見人になるために特別な資格は必要ありません。しかし、誰でも成年後見人になれるわけでもありません。民法847条には後見人になれない人として5つの欠格事由が示されています。保佐人や補助人も同様です。 欠格事由は次のとおりです。
(1) 未成年者  
未成年者は原則として、単独で有効に契約の締結などをすることができません。したがって、成年被後見人のために財産管理などを担当しなければならない成年後見人として、未成年者はふさわしくありません。
(2) 家庭裁判所に解任された法定代理人(成年後見人等)・保佐人・補助人
本人との関係で裁判所に成年後見人として不適格として解任された者や、第三者の法定後見人等に就職していて解任されたことがある者も不適任ということです。
(3) 破産者
破産手続き開始の決定を受けて、未だ免責されていない人を指します。破産手続き開始の決定を受けていても、既に裁判所で免責許可決定をうけていれば、欠格事由には該当しません。
(4) 被後見人に対し訴訟をし、またはした者およびその配偶者並びに直系血族
成年被後見人と利害関係はもちろん感情的にも敵対関係にある者として、排除されています。
(5) 行方不明者 後見人の重要な職務を任せられないことは明らかです。

Q.
成年被後見人、被保佐人、被補助人は本人に代わって、遺言をすることができますか?

A.
遺言は15歳に達した者であればすることができます(民法961条)。そして、遺言については、成年後見人の取消権はなく、保佐人・補助人の同意も不要であると明記されています(民法962条)。したがって、成年被後見人、被保佐人、被補助人は遺言内容を理解し、その結果を理解できる意思能力(「遺言能力」といいます)があれば遺言をすることができます。 但し、成年被後見人は判断能力を欠く常況にあるので、原則として遺言能力はありません。しかし、時として意思能力を回復している状態であれば医師2人以上の立会いのもと、一時的に遺言をすることができる状態にあったことを遺言書に付記してもらうという手続きにより遺言をすることができます(民法973条)。 被保佐人や被補助人にはこのような手続上の要件はありません。

Q.
成年被後見人が婚姻するには成年後見人や保佐人の同意が必要ですか?

A.
成年被後見人が婚姻をするために、成年後見人の同意は必要ありません(民法738条)。また、婚姻は性質上代理人をたてない行為ですので、成年後見人が代理して婚姻することもできません。 ただ、成年被後見人において、婚姻の意味を理解し判断できる能力があることが前提です。このような婚姻の法的な効果を理解することができる判断能力、精神能力(「婚姻能力」といいます)がなければ婚姻は無効になります。 なお、成年後見が導入される以前は、婚姻能力があることを証する医者の診断書が婚姻の届出に必要とされていましたが、現在は不要になりました。

Q.
成年後見の登記とは、どのようなものですか?

A.
禁治産、準禁治産の制度では、禁治産宣告等がなされると、本人の戸籍上に、禁治産、準禁治産の宣告の事実と後見人の氏名が記載されました。そのため、本人や家族の抵抗が大きく、制度の利用はあまり進みませんでした。 これに対し、成年後見では、戸籍への記載に代わる成年後見登記制度が新しく創設されています。この制度は、成年後見人などの権限や任意後見契約の内容などをコンピュータ・システムによって登記し、登記官が証明書(登記事項の証明書・登記されていないことの証明書)を発行することによって登記情報を開示する制度です。法定後見、任意後見の登記は、原則として裁判所書記官または公証人の嘱託に基づいて、後見登記等ファイルに所定の事項を記録する方法で行われ、東京法務局の後見登録課で、全国の成年後見登記事務が扱われています。ただ、登記事務のうち窓口での証明書の交付事務については東京法務局の他、各法務局と地方法務局戸籍課でも扱っています。 登記される事項は、法定後見の場合、法定後見の種類、審判、確定日、本人の氏名、生年月日、住所および本籍、成年後見人等・成年後見監督人の氏名および住所、補助人や保佐人の同意権の内容・代理権の範囲等、数人の後見人等の事務の分掌・共同行使の有無、法定後見終了に関する事項等です。任意後見の場合は、任意後見契約の公正証書に関わる事項、本人の氏名、生年月日、住所および本籍、任意後見人等・任意後見監督人の氏名および住所、任意後見監督人選任の審判の確定日、共同代理に関する事項任意後見終了に関する事項等です。 戸籍が利用されていた禁治産制度とは異なり、成年後見人等の多様な権限を公示することが可能になっています。

Q.
成年後見に関して登記されている内容はどのようにして確認したり証明したりすることができますか?

A.
成年後見などについて登記されている内容は、プライバシーに配慮しているため、閲覧することはできません。そこで、本人や成年後見人など限られた方からの請求がある場合に、全国の法務局が発行する「登記事項証明書」によってその内容を確認することができるに留まります。 法定後見、任意後見に関する登記については、2種類の証明書の交付請求が可能です。一つは登記事項を証明する登記事項証明書で、もう一つは、登記記録に記載がないことの登記事項証明書です。いずれもプライバシーに関わる情報なので、交付請求できる者が限定されています。請求できるのは、登記記録に記録されている者、本人の配偶者または四親等内の親族、職務上必要とする国または地方公共団体の職員等です。 上記のように法定後見等の登記情報の開示は、たとえば取引の相手方となるというだけでは請求できません。そこで、成年被後見人であることを疑わせる事情があり、判断能力に不安がある者を相手に取引を予定している場合は、その相手に登記されていないことの証明書または登記事項証明書の提示を求めることになります。 後見人等は、その資格を登記事項証明書により証明できます。また、裁判所の後見人等選任の審判の謄本、確定証明書によって資格を証明することもできます。

Q.
成年後見を利用した事例を教えてください。

A.
本人がアルツハイマー病で、妻が成年後見を申立て、自ら成年後見人になった次のような事例があります。 本人は5年程前から物忘れがひどくなり、勤務先の直属の部下を見ても誰だかわからなくなるなど、次第に社会生活を送ることができなくなりました。日常生活においても、家族の判別がつかなくなり、その症状は重くなる一方で回復の見込みはなく、2年前から入院しています。 ある日、本人の弟が突然事故死し、本人が弟の財産を相続することになりました。弟には負債しか残されておらず、困った本人の妻が相続放棄のために、後見開始の審判を申し立てました。家庭裁判所の審理を経て、本人について後見が開始され、夫の財産管理や身上監護をこれまで事実上担ってきた妻が成年後見人に選任され、妻は相続放棄の手続をしました(最高裁判所「成年後見関係事件の概況」より)。

Q.
成年後見人の職務にはどのようなものがありますか?

A.
成年後見人の就任後の職務としては、成年被後見人の財産調査を行い1ヶ月以内に財産目録を作成して家庭裁判所に提出しなければなりません。また、年間の収支の計画を立てることもその職務です。 他にも、成年後見人は、成年被後見人の預貯金に関する取引、治療や介護に関する契約の締結等、必要な法律行為を行います(実際の介護行為は成年後見人の職務には含まれません)。 また、成年被後見人の財産が他人のものと混ざらないよう管理し、通帳や証書の保管、収支計画の作成などの財産管理もその職務です。 成年後見人は、行った職務を定期的に家庭裁判所に報告し、必要があれば事前に家庭裁判所に相談するなど、家庭裁判所や後見監督人の監督を受けることになります。

Q.
成年後見人と成年被後見人の利害が対立する行為については、どう扱われるのですか?

A.
成年被後見人の不動産を成年後見人が購入する場合や、成年後見人の債務について成年被後見人が保証人になる場合、成年後見人の債務について成年被後見人の不動産に抵当権を設定する場合などは、成年後見人が成年被後見人の利益を犠牲にして自己の利益を優先させてしまうおそれがあります。 そこで、このような利益が対立するケースでは、家庭裁判所で特別代理人が選任されます。特別代理人はこのような場合において、成年被後見人を代理して成年後見人と契約などを行います。特別代理人の選任申立は、成年後見人、成年被後見人またはその親族や利害関係人においてすることができます。 ただし、後見監督人が選任されている場合は、特別代理人は選任されずに後見監督人が特別代理人の役割を果たします。 以上のように特別代理人等が選任されて利害の衝突を回避する仕組みになっているのです。 保佐人と被保佐人、補助人と被補助人の利害が対立する場合も同様で、特別代理人として臨時保佐人、臨時補助人がそれぞれ選任されます。また、保佐監督人や補助監督人が選任されている場合はその者が特別代理人の役割を果たす点も成年後見人の場合と同様です。

Q.
成年後見人のほかに後見監督人という人が選任されることがあるとききましたが、これはどういうものですか?

A.
成年後見監督人とは、家庭裁判所による成年後見人の監督を補う機関で、家庭裁判所が選任する者です。通常は、親族等からの申立てによって選任されますが、家庭裁判所が申立てを待たずに、職権で選任することもできます。 成年後見監督人の職務の中心は、成年後見人が行う後見の事務を監督することです。つまり、成年後見監督人は、成年後見人が任務を怠ったり、不正な行為を行わないよう監督する役割を担います。
(1)事務の監督
成年後見監督人は、成年後見人による財産の調査および財産目録の調整に立ち会います。そして、何時でも、後見人に対し、後見の事務の報告もしくは財産の目録の提出を求め、または後見の事務もしくは被後見人の財産の状況を調査ができます。
(2)後見人への同意
また、成年後見人が被後見人に代わって営業、借入れ、不動産の処分等の重要な行為を行おうとする場合には、成年後見監督人の同意を得なければなりません。
(3)利益対立時の代理
さらに、成年被後見人と成年後見人の利益が対立する場合は成年後見監督人が成年後見人を代理します。例えば、成年後見人が被後見人の所有不動産を買うような場合です。成年後見人が被後見人の利益を犠牲にして自己の利益を優先するおそれのある行為だからです(不当に安い金額で不動産の譲渡を受けるなど)。このような場合には、被後見人の利益を保護するため、成年後見監督人が被後見人の代理人となるのです。
(4)解任請求
監督の過程において、成年後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事実が判明したときは、成年後見監督人は、成年後見人の解任を家庭裁判所に請求することも可能です。

Q.
法人が成年後見人になるメリットは何でしょうか?

A.
民法は成年後見人となる者が法人であるときを想定しています(民843条4項、876条の2第2項、876条の7第2項)。したがって、成年後見人等には、個人だけでなく、法人もなることができます。現実に、これまで裁判所で法人後見人に選任された例には、司法書士で組織された社団法人があります。 法人が成年後見人になる場合でも、現実にその職務行為を行うのは、その法人で働く個人です。 法人で働く個人は、一つの組織化された集団の一員として、連携協同することが期待できます。したがって、職務の内容が広範にわたる場合等にも、組織化された複数人により対応することが可能と考えられるのです。また、法人はその性質上、個人のように健康上の理由で職務が停滞することもなく、その寿命に限度がありません。通常、万一成年後見人等が死亡すれば、成年後見開始事由が継続する限り、裁判所に申し立てをして新たに成年後見人の選任してもらう必要があります。しかし、法人後見人の場合は、仮に法人で働く担当者個人が病気になったり死亡したりしても、同一法人で働く他の個人が替わって対応できますから、法人後見人自体の職務執行が不可能となることはないのです。もちろん、法人も破産等により解散することがありえますが、そういう特別な事態を別にすれば、永続的に職務の執行が可能といえます。

Q.
同居することになった成年被後見人の自宅を売却するにあたり、家庭裁判所の許可が必要なのはなぜですか?

A.
成年後見人は、成年被後見人本人の財産に関する法律行為について代理権を付与されることで、原則として、自己の判断により本人の財産の処分を行うことができます。 しかし、居住環境は本人の精神へ多大な影響を与えるものと考えられ、居住用不動産の処分は、本人の日常生活、精神を含む健康にも大きな影響を与えるため、身上監護の観点から、後見人等の法律行為による権限を制限し、家庭裁判所の許可が必要とされたものです(民859条の3)。 「居住の用に供する」とは、生活の本拠として現に居住の用に供しており、または居住の用に供する予定があるという趣旨です。なお、すでに同居していても、同居前に居住していた不動産は「居住用」不動産に該当し、後見人等が本人に代わって処分する場合には、家庭裁判所の許可が必要なのです。

Q.
自分自身を成年後見人の候補者として推薦しましたが、別の人が成年後見人に選任されました。私はこれに対して不服申立てができますか?

A.
後見開始の審判に対しては、本人、配偶者、4親等以内の親族などの者が不服申立をすることができます。 しかし、成年後見人の選任のみについて不服申立てをすることはできません。なぜなら、家庭裁判所は後見開始の審判をする場合に職権で成年後見人を選任しますが、この選任は後見開始の審判に付随するものであって、後見開始の審判自体に対する不服と切り離して、不服申立ての対象とならないからです。 ご質問の場合も、ご自身が選任されないことのみに対する不服であれば、不服申立てはできません。

Q.
保佐の制度を利用した事例を教えてください。

A.
本人が中程度の認知症で、長男が保佐開始の審判を申立て、保佐人になった次のような事例があります。本人は1年前に夫を亡くしてから一人暮らしをしていました。以前から物忘れが見られましたが、最近症状が進み、買物の際に1万円札を出したか5千円札を出したか、分からなくなることが多くなり、日常生活に支障が出てきたため、長男家族と同居することになりました。隣県に住む長男は、本人が住んでいた自宅が老朽化しているため、この際自宅の土地、建物を売りたいと考えて、保佐開始の審判の申立てをし、併せて土地、建物を売却することについて代理権付与の審判の申立てをしました。  家庭裁判所の審理を経て、本人について保佐が開始され、長男が保佐人に選任されました。長男は、家庭裁判所から居住用不動産の処分についての許可の審判を受け、本人の自宅を売却する手続を進めました(最高裁判所「成年後見関係事件の概況」より)。

Q.
保佐人の職務にはどのようなものがありますか?

A.
保佐人の職務は、被保佐人本人の意思を尊重し、かつ、本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、本人に対し、適切に同意を与えたり、本人に不利益な行為を取り消したりすることです。また、特定の行為について代理権を行使することもあります。そして、それらの内容について定期的に裁判所に報告することも含まれます。 具体的には、被保佐人が重要な財産行為を行う際にその内容を判断して同意することや、被保佐人が保佐人の同意を得ないで重要な財産行為をした場合にはこれを取り消したりします。 また、別途代理権の付与の申立が認められれば、被保佐人の財産に関する法律行為のうち、審判で認められた代理権の範囲内で被保佐人の財産の管理権を行使します。 保佐人は、行った職務を定期的に家庭裁判所に報告し、必要があれば事前に家庭裁判所に相談するなど、家庭裁判所や保佐監督人の監督を受けることになります。

Q.
被保佐人が単独でできなくなるのはどのような行為ですか?

A.
保佐開始の審判がなされると、本人は、被保佐人と呼ばれ、保佐人が選任されます。この場合、本人は被保佐人と呼ばれ、被保佐人は、民法13条に列挙されている一定の法律行為をするときは、保佐人の同意が必要になります。被保佐人は基本的には自ら法律行為をすることができますが、上記の民法所定の行為については単独ですることができません。仮に、同意のないままなされた場合は保佐人が取消すことで(または追認することも可能)本人の財産の保護が図られます。 民法13条に列挙されている法律行為は次のものです。
(1) 元本を領収し又は利用すること
(2) 借財又は保証をすること
(3) 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること
(4) 訴訟行為をすること
(5) 贈与、和解又は仲裁合意をすること
(6) 相続の承認もしくは放棄又は遺産の分割をすること
(7) 贈与の申込を拒絶し、遺贈を放棄し、負担付の贈与の申込を承認すること
(8) 新築、改築、増築又は大修繕をすること
(9) 民法第602条に定めた期間をこえる賃貸借をすること

Q.
補助の制度を利用した事例を教えてください。

A.
本人が軽度の認知症で、長男が補助開始の審判を申立て、補助人になった次のような事例があります。 本人は、最近米を研がずに炊いてしまうなど、家事の失敗がみられるようになり、また、長男が日中仕事で留守の間に、訪問販売員から必要のない高額の呉服を何枚も購入してしまいました。困った長男が家庭裁判所に補助開始の審判の申立てをし、併せて本人が10万円以上の商品を購入することについて同意権付与の審判の申立てをしました。  家庭裁判所の審理を経て、本人について補助が開始され、長男が補助人に選任されて同意権が与えられました。その結果、本人が長男に断りなく10万円以上の商品を購入してしまった場合には、長男がその契約を取り消すことができるようになりました(最高裁判所「成年後見関係事件の概況」より)。

Q.
補助人の職務にはどのようなものがありますか?

A.
補助人の職務は、被補助人本人の意思を尊重し、かつ、本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、本人に対し、適切に同意を与え、本人の行為を取り消したり、代理権を行使したりすることです。そして、それらの内容について定期的に裁判所に報告することも含まれます。 補助人は同意権付与の申立が認められれば、被補助人が審判で認められた行為(重要な財産行為の一部に限ります)を行う際に同意をすることや、被補助人が補助人の同意を得ないでこの行為をした場合はこれを取り消すことができます。たとえば、介護の契約や預貯金の取引などが同意の対象となる行為とされます。また、代理権の付与の申立が認められれば、これを行使することができ、認められた代理権の範囲内で被補助人の財産の管理権を行使します。 補助人は、行った職務を定期的に家庭裁判所に報告し、必要があれば事前に家庭裁判所に相談するなど、家庭裁判所や補助監督人の監督を受けることになります。

Q.
成年後見人等の職務はどんな時に終了するのですか?

A.
絶対的終了原因に該当すると成年後見等の職務は終了します。絶対的終了原因とは簡単にいえば後見が不要な状態になる場合で、次のものがあります。
(1) 本人の死亡(失踪宣告を受けた場合も含みます)
(2) 能力回復による後見開始の審判の取消し(保佐、補助、任意後見に移行した場合も含みます)
相対的終了原因に該当する場合もその成年後見人等の職務は終了します。相対的終了原因とは、後見は必要であるものの、それまでの成年後見人との関係は終了する場合です。次のものがあります
(1) 成年後見人の死亡
(2) 成年後見人の辞任
(3) 成年後見人の解任
(4) 成年後見人が欠格事由に該当

Q.
成年後見人が選任されているのですが、最近、辞任したいと言い出しました。どのような場合に成年後見人は辞任できるのですか?

A.
成年後見人等は家庭裁判所によって成年被後見人本人を保護する適任者として選任されている者であり、勝手に辞任することは本人に不利益を与えることになりかねません。また、成年後見人等が負っている本人に対する注意義務違反になる可能性もあります。  そこで、民法は後見人が辞任できるのは正当な理由があって家庭裁判所の許可を得たときであると定めています(884条)。  正当な理由とは裁判所が一切の事情を考慮して判断します。たとえば成年後見人等の病気や、成年後見人等が仕事の都合で遠隔地に住居を移転し、職務の遂行に支障が生じるような場合、さらに本人またはその親族と不和が生じたような場合が想定されます。  いずれにしても、このような具体的な事情から家庭裁判所が正当であると判断して許可しない限り、成年後見人等は辞任することはできません。

Q.
成年後見人等が解任されるのは、どのような場合ですか?

A.
成年後見人等に不正な行為、著しい不行跡、その他任務に適しない事由があるときに解任されます。  具体的に「不正な行為」とは、違法な行為や社会的に非難されるに相当な行為であり、「著しい不行跡」とは、品行ないし操行が甚だしく悪いことであり、「その他任務に適しない事由」とは、後見人としての権利の濫用や管理失当、任務懈怠などを指します。 これらは、成年後見人等が成年被後見人を保護する上で、重大な責務を負い、ある程度の権限を付与されるため、その濫用により成年被後見人自身に被害が及ばないよう、適格性を保つために挙げられています。

Q.
成年後見が終了した場合、どのような手続きが必要になりますか?

A.
後見の計算法定後見が終了したときは、成年後見人(またはその相続人)は、2ヶ月以内にその管理していた財産等の計算をしなければなりません(民法870条)。計算の結果を元に、就任時と同様に財産目録を作成し、家庭裁判所に提出します。  財産等の計算は、後見監督人があるときは、その立会いを得て行う必要があります。成年後見人が計算の終了前に死亡したときは、成年後見人の相続人が財産等の計算をすべき義務を負います。 辞任や解任など、家庭裁判所の審判によって成年後見人の任務が終了した場合には、家庭裁判所の書記官から東京法務局に対して変更の登記が嘱託されます。  一方、本人の死亡によって成年後見人の任務が終了した場合は、成年後見人は後見終了の登記を法務局に申請しなければなりません。 報酬付与の審判の申立て家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができます(民法862条)。成年後見人はそのため報酬付与の審判の申立てを行います。特に親族等が成年後見人である場合、報酬を与えるかどうかおよびその金額は家庭裁判所の裁量に委ねられます。 成年後見人は保管財産を引き渡す必要がありますが、終了原因によって引き渡す相手が異なります。
(1)本人死亡により法定後見が終了した場合
遺言がある場合は、原則的には、遺言執行者または受遺者に財産を引き渡します。これに対し、遺言がないときや、遺言の対象となっていない財産があるときは、原則として相続人に引き渡すことになります。また、遺言がなく相続人もいない場合、成年後見人が利害関係人として相続財産管理人選任の申立てをし、選任された相続財産管理人に引き渡します。
(2)成年後見人の辞任、解任によって法定後見が終了した場合
後任の成年後見人等に引き渡します。
(3)能力回復により成年後見開始の審判が取り消された場合
本人に引き渡します。
家庭裁判所への報告財産を引き渡し、全ての事務が終了した後、成年後見人は家庭裁判所に後見終了の報告書を提出します。

Q.
任意後見とは何ですか?

A.
任意後見とは、「任意後見契約に関する法律」で定められた制度です。これは、本人の判断能力が低下する以前から、本人と任意後見人になる予定の者が、任意後見契約を結ぶときに適用されます。任意後見契約とは、本人が将来「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況に」なった際に、「自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部」をあらかじめ受任者に委託し、その委託に係る事務について代理権を付与するという委任契約です。 任意後見は、法定後見とは異なり、本人が主体的に予め将来のために委任する事項を決めることができます。本人に判断能力があるうちに、判断能力が欠ける状態となった後の財産管理や身上看護を委任するので、契約の内容は本人の希望とおりの内容とすることができます。そして、本人の判断能力が欠ける状態になったときは、任意後見契約の受任者が家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てます。そして、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときに、任意後見契約の効力が発生するのです。 注意が必要なのは、任意後見契約は、公正証書によらないと結ぶことができない点です。公正証書の作成費用は、内容に関わらず一律1万1000円です。そして、任意後見契約の公正証書が作成されると、公証人が登記所に嘱託して、任意後見契約の登記がなされます。登記にかかる費用は5400円です。

Q.
任意後見のメリットはなんですか?

A.
任意後見の利点は、自分にまだ判断能力があるうちに、最も信頼できる人を自分自身で任意後見人として選ぶことができます。また、その任意後見人に行ってもらう事務の内容を予め任意後見契約によって取り決めることができます。その上、契約は信頼できる第三者である公証人を介して公正証書で行われ、契約内容の登記もされるので任意後見人の地位が公的に証明され、社会的な信用も高いものといえます。さらに、任意後見人に対して、家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、公的な監督が付くので、任意後見人に対するチェック機能もあり安心できます。

Q.
任意後見と法定後見はどちらが優先するのですか?

A.
任意後見がなされている場合に、法定後見開始の審判を申し立てたり、逆に、法定後見がなされている場合に、任意後見契約に基づく任意後見を開始することができるのかが問題となることがあります。 任意後見は本人が自ら契約をしたものですから、自己決定権を尊重すれば、任意後見を優先することになります。 通常は、任意後見契約が登記されている場合、原則として、法定後見の開始の審判をすることはできません(任意後見契約に関する法律10条1項)。したがって、任意後見契約が登記されている場合は、本人の判断能力が低下して、申立権者による任意後見開始の申立てがなされれば、任意後見監督人の選任の審判がされ、任意後見人が、任意後見事務を開始することになります。この場合、前になされていた法定後見開始の審判は取り消されます。 ただ例外として、「本人の利益のため特に必要があると認めるとき」は法定後見の審判が維持されて、任意後見に必要とされる任意後見監督人は選任されません。 逆に、任意後見契約が登記されている場合でも、「本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り」法定後見の審判ができる場合があり、その時は、任意後見契約は、当然に終了します。 たとえば、任意後見に与えられている代理権の範囲が狭すぎて十分な職務が出来ない場合や、任意後見人に不適任な理由がある場合も法定後見が必要となります。また、任意後見契約締結時に本人に契約を締結する能力がなかった場合も任意後見契約自体が無効になるので、法定後見を利用することになります。

Q.
任意後見の場合、家庭裁判所は任意後見人に対しどのような監督を行うのですか?

A.
家庭裁判所による任意後見人の監督は、任意後見監督人を介して間接的に行われます。 家庭裁判所は定期的に任意後見監督人から任意後見人の事務についての報告を受けていますが、必要があれば、任意後見監督人に対し次のようなことを命じることができます(任意後見契約に関する法律第7条3項)。
1 任意後見人の事務に関する報告(解任事由の有無も含みます)
2 任意後見人の事務や本人(被後見人)の財産状況の調査
3 任意後見監督人の職務について必要な処分
さらに、家庭裁判所は、任意後見人に不正などがある場合は、関係者の請求によって任意後見人を解任することもできます。 このように家庭裁判所の監督は間接的ではありますが、任意後見人に対する最終的な監督権といえます。

Q.
任意後見人には報酬を支払わなくてもよいのでしょうか?

A.
任意後見人の報酬は、本人と任意後見人を引き受けた者との話し合いによります。一般的には、任意後見人を第三者に依頼した場合には、報酬を支払うのが普通ですが、身内の人が引き受けた場合には、無報酬の場合が多いという傾向があります。報酬を支払う場合は、本人の財産の中から支払われることになります。 ちなみに、任意後見契約が無報酬の場合には、任意後見人になった者により多くの財産を相続させたり、財産を遺贈したりするなどして任意後見人の無報酬での事務処理の労に報いるということも考えられます。

Q.
任意後見契約が登記されているのに、家庭裁判所が法定後見の開始の審判をするのはどのような事情がある場合ですか?

A.
任意後見は本人の意思を尊重する制度であるため、原則として法定後見に優先します。 ところが、家庭裁判所は、任意後見契約が登記されている場合でも、「本人の利益のため特に必要がある」と認めるときに限り、後見開始等の審判ができることになっています(任意後見契約に関する法律10条)。具体的に「本人の利益のため特に必要がある」事情とは次のような場合です。
(1)本人が任意後見人に与えた代理権の範囲が狭くて必要な法律行為が行えない場合
この場合、本人から代理権の範囲を追加してもらいたくても、本人の判断能力が低下していて無理な場合は、裁判所に法定代理権を与えてもらうことが必要になります。 例えば、当初は予定していなかったものの、本人の生活費のため自宅を売却せざるをえない状況になった場合、そのような権限を追加する必要があります。
(2)本人について同意権、取消権による保護が必要な場合
任意後見においては本人も契約を締結することができる能力がある間は、自らした契約により消費者被害にあったりすることがあります。このような場合、法定後見の契約の取消権により本人を保護すべき場合があります。
(3)任意後見人が適性を欠く場合
任意後見受任者が本人に対して訴訟をし、またはした者およびその配偶者並びに直系血族である場合は、通常、経済的にも感情的にも対立関係にあるといえ、任意後見人として適切といえません。また、任意後見受任者に不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある場合も同様です。

Q.
任意後見監督人には資格が必要ですか?

A.
任意後見監督人になるための資格については、法律上の定め特にありませんが、任意後見監督人となることができない者として、次の者を排除しています。したがって、次のいずれにも該当しないことが任意後見監督人になるための資格ということができます。
(1) 任意後見受任者または任意後見人の配偶者、直系血族および兄弟姉妹
(2) 未成年者
(3) 家庭裁判所で過去に後見人・保佐人・補助人の地位を解任されたことのある者
(4) 親権喪失・管理権喪失の宣告を受けたことのある者
(5) 破産者
(6) 本人に対して訴訟をし、またはした者及びその配偶者並びに直系血族
(7) 行方不明者
上記(1)以外は法定後見人の欠格事由と同様です。

Q.
任意後見監督人となる者を家庭裁判所に対して推薦することができますか?

A.
はいできます。しかし、推薦された候補者が必ずしも家庭裁判所から選任されるとは限りません。任意後見監督人は、家庭裁判所に代わって、任意後見人の不正を防止し、財産管理等が適正に行われているかを監督する重要な役目を担います。したがって、家庭裁判所は、その役割を担える人を選任しますので、推薦には必ずしも拘束されません。 なお、任意後見監督人の選任に際し、家庭裁判所は、本人の心身の状態並びに生活および財産の状況を考慮し、任意後見監督人となる者の職業および経歴並びに本人との利害関係の有無を考慮し、さらに、本人の意見その他一切の事情を考慮することになっています。したがってこのような観点から適任と思われる人物がいる場合は推薦することは有益であるといえます。

Q.
任意後見監督人選任の申立はどのようなタイミングでしたらよいでしょうか?

A.
任意後見は任意後見監督人が選任されなければ効力を生じません。そこで、任意後見をスタートさせるためには任意後見監督人選任の申立をするタイミングが重要になります。 任意後見契約に関する法律第4条1項は、「任意後見契約が登記されている場合において、精神上の障害により本人の事理を弁識する能力が不十分な状況にあるとき」は家庭裁判所が任意後見監督人を選任するとされています。  これは法定後見でいう補助人の能力の程度と同じです(補助は民法15条1項によると「事理を弁識する能力が不十分である者」について開始できます)。

Q.
本人以外の者が任意後見監督人の選任申立をする場合、本人の同意を得る必要がありますか?

A.
任意後見監督人の選任申立は本人、配偶者、四親等以内の親族、任意後見受任者(任意後見契約における受任者)においてすることができます。 任意後見契約が発効すると任意後見人に代理権が与えられることになり、本人以外のものが契約を締結したり財産を管理したりすることになります。 そこで、この申立を本人以外の者がする場合は本人の意思を尊重するために本人の同意が必要とされています。これは補助開始の審判の際に本人以外の者の申立による場合は本人の同意が必要であることと同じ趣旨の規定です。 ただし、任意後見の場合は、本人の判断能力が同意の意味を理解できない状態になっていたり、意思表示ができない程度まで進行している場合があるので、そのような場合は同意は不要であるとされています(法定後見であればこのような場合は保佐や後見の開始の審判とすることで本人の同意が必要なくなります)。

Q.
任意後見監督人の職務には何が含まれますか?

A.
任意後見監督人の職務については任意後見契約に関する法律第7条で次のように定められています。 ① 任意後見人の事務を監督すること。任意後見人の不正や権限の濫用が行われないように事務を監督することです。
② 任意後見人の事務に関し、家庭裁判所に定期的に報告すること。裁判所の指示による一定の期間ごとに報告書を提出します。
③ 急迫の事情がある場合に、任意後見人の代理権の範囲内において、必要な処分をすること。任意後見人が事務をなしえない場合などに、必要な措置をとることです。
④ 任意後見人またはその代表する者と本人(被後見人)との利益が相反する行為について本人を代表すること。任意後見人と本人の利益が対立する場合に任意後見人にかわって本人の代理人となることです。

Q.
任意後見監督人の報酬はどのように決まるのですか?

A.
任意後見監督人には任意後見人とは異なり、必ず報酬を支払う必要があります。報酬は、本人の財産から支出されます。その報酬額は、任意後見監督人が報酬付与の申立を行い、家庭裁判所が事案に応じて決定します。本人の財産の額(経済状況)、監督事務の内容(複雑かどうか)、任意後見人の報酬額(報酬の有無やその水準)その他の事情を考慮して、本人の将来の生活を脅かさない水準で決定されます。

Q.
任意後見はいつ開始するのですか?

A.
任意後見では、任意後見契約を締結することが不可欠ですが、契約を締結しただけでは開始されません。任意後見は、本人の判断能力が衰えるようになり、家庭裁判所において、任意後見監督人が選任されてはじめて開始されます。任意後見監督人は、本人の判断能力が衰えた段階で、本人・配偶者・4親等内の親族または任意後見人が家庭裁判所に選任を申立てます。この任意後見監督人が選任された時点で、任意後見人は後見人として正式に就任します。任意後見監督人はこの任意後見人の代理権の行使を監督するのです。つまり、後見監督人は、自ら監督できない本人に代わって、任意後見人を監督することになります。

Q.
任意後見契約の締結には、なぜ公正証書が必要なのでしょうか?

A.
任意後見契約は、法律上、公証人の作成する公正証書によらなければなりません。(任意後見契約に関する法律第3条)。任意後見契約は、任意後見人に委任する内容を定める契約で、その当事者は委任者である本人と受任者となる任意後見人です。 公証人は公証役場にいる法律の専門家(裁判官を退官した人などが多い)であり、任意後見契約は、この公証人に本人の判断能力と意思を確認させて、この契約の有効な成立を確認します。 仮に、この契約に公正証書によることを要求しないとすると、後になって、この任意後見契約が無効だといった紛争が多発しかねないので、公証人による公正証書の作成はそのような紛争防止のためであるといえます。

Q.
任意後見契約の締結は公正証書によるそうですが、公証人役場に行かなければなりませんか?

A.
任意後見契約は、全国にある公証人役場において公正証書によって契約書を作成します。この場合、契約の当事者である本人と委任をうける予定である任意後見人は、最寄りの公証人役場に出向いて契約書を作成してもらうのが通常です。 しかし、高齢のために外出がままならない人や身体が不自由な人が契約の当事者となる場合、当事者の依頼により、公証人が本人の自宅や入所施設または任意後見受任者の事務所等に赴いて公正証書を作成することもできます。

Q.
任意後見契約にはいくつかの種類があると聞きましたが、その違いについて教えてください。

A.
任意後見人が就任するまでの違いによって、3つの類型(将来型・移行型・即効型)に分けることができます。
(1)将来型
法律がもっとも一般的な類型として予定しているものです。すなわち、本人が任意後見契約締結の時点では、将来、任意後見人になる人に何も委託せず、将来自己の判断能力が低下した段階で初めて任意後見人による保護を受けようとする契約形態です。この類型では、任意後見監督人が選任されるまでの間、受任者に委任事務はありません。
(2)移行型
移行型は、本人の判断能力低下前は、受任者に財産管理等の事務を委託する委任契約を締結し、本人の判断能力低下後は、任意後見契約にもとづき任意後見監督人の選任時から任意後見人が代理権を行使するものです。つまり、本人の判断能力低下前の委任契約の受任者が、本人の判断能力が低下した段階で任意後見人として受任内容を変えながら継続して担当することになります。
(3)即効型
即効型は、契約締結後、ただちに任意後見受任者や本人の親族の申立てにより、家庭裁判所に任意後見監督人を選任してもらい、任意後見契約の効力を発生させるものです。契約締結の当初から任意後見人による保護を受けることができます。前提として、任意後見契約の締結時には本人に契約を締結できるだけの判断能力(意思能力)が必要です。

Q.
任意後見契約ではどのような事項について契約するのですか?

A.
任意後見契約は委任契約の一種で、本人が委任者として将来任意後見人になる人(受任者)との間で委任する事項を定め、受任者に代理権を付与する契約です。 委任する事項は代理権を付与して契約等の法律行為を行ってもらうための事務に限られます。したがって、後見人が日常の介護をするというような委任は任意後見契約ではできません。 本人が委任する事項としては次のものが一般的です。
(1)財産管理に関する法律行為
たとえば、預貯金の払い戻し、不動産の管理・処分、遺産分割などです。
(2)日常生活や療養看護等に関する法律行為
たとえば、介護契約の締結、要介護認定の申請、施設への入所契約などです。

Q.
任意後見人に公正証書で代理権を与える場合、どのようにして代理権の内容が示されるのですか?

A.
任意後見契約における委任事務の代理権は、代理権を与える項目を契約の中で示したり、別紙の代理権目録をつけるなどして示すのが一般的です。 代理権目録の一例は以下のとおりです。
代理権目録
(1) 不動産、動産等すべての財産の保存、管理、変更及び処分に関する事項
(2) 金融機関、証券会社とのすべての取引に関する事項
(3) 保険契約(類似の共済契約等を含む。)に関する事項
(4) 定期的な収入の受領、定期的な支出を要する費用の支払に関する事項
(5) 生活費の送金、生活に必要な財産の取得、物品の購入その他の日常生活関連取引に関する事項
(6) 医療契約、入院契約、介護契約その他の福祉サービス利用契約、福祉関係施設入所契約に関する事項
(7) 登記済権利証、印鑑、印鑑登録カード、各種カード、預貯金通帳、株券等有価証券、その預り証、重要な契約書類その他重要書類の保管及び各事項処理に必要な範囲内の使用に関する事項
(8) 登記及び供託の申請、税務申告、各種証明書の請求に関する事項
(9) 以上の各事項に関する行政機関等への申請、行政不服申立て、紛争の処理(弁護士に対する民訴法55条2項の特別授権事項の授権を含む訴訟行為の委任、公正証書の作成嘱託を含む。)に関する事項
(10) 復代理人の選任、事務代行者の指定に関する事項
(11) 以上の各事項に関連する一切の事項

Q.
任意後見契約で将来の後見人に与える代理権の内容を特定するための様式があるとききましたがどのようなものですか?

A.
任意後見契約に関する法律第3条は法務省令で任意後見契約の様式を定めるとしており、その様式の1つがチェックリストの形式で代理権の内容を特定するものになっています(任意後見契約に関する法律第三条の規定による証書の様式に関する省令 付録第1号様式)。その様式は次のようにチェックボックス(チェックボックス)にチェックをいれて代理権の範囲を特定するものです。

A 財産の管理・保存・処分等に関する事項
1 
チェックボックス 甲に帰属する別紙「財産目録」記載の財産及び本契約締結後に甲に帰属する財産(預貯金〔B1・B2〕を除く。)並びにその果実の管理・保存
2 
チェックボックス 上記の財産(増加財産を含む。)及びその果実の処分・変更
チェックボックス 売却
チェックボックス 賃貸借契約の締結・変更・解除
チェックボックス 担保権の設定契約の締結・変更・解除
チェックボックス その他(別紙「財産の管理・保存・処分等目録」記載のとおり)

B 金融機関との取引に関する事項
1
チェックボックス 甲に帰属する別紙「預貯金等目録」記載の預貯金に関する取引(預貯金の管理、振込依頼・払戻し、口座の変更・解約等。以下同じ。)
2 
チェックボックス 預貯金口座の開設及び当該預貯金に関する取引
3 
チェックボックス 貸金庫取引
4 
チェックボックス 保護預り取引
5 
チェックボックス 金融機関とのその他の取引
チェックボックス 当座勘定取引 チェックボックス 融資取引 チェックボックス 保証取引 チェックボックス 担保提供取引 
チェックボックス 証券取引〔国債、公共債、金融債、社債、投資信託等〕
チェックボックス 為替取引
チェックボックス 信託取引(予定(予想)配当率を付した金銭信託(貸付信託)を含む。)
チェックボックス その他(別紙「金融機関との取引目録」記載のとおり)
6 
チェックボックス 金融機関とのすべての取引
(以下省略)

Q.
任意後見契約は公正証書によるそうですが、様式面でほかに注意すべき点がありますか?

A.
「任意後見契約は、法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならない。」(任意後見契約に関する法律第3条)と定められており、具体的な様式については、「付録第1号様式または付録第2号様式による用紙に、任意後見人が代理権を行なうべき事務の範囲を特定して記載しなければならない。」と定められています。この第1号様式は、個別的に与えられた代理権を特定していくというチェックリスト方式をとっています。 一方、第2号様式は第1号様式を用いない場合、とされています。 これらの様式には一長一短があります。 まず第1号様式では、代理権の特定が明確に行え、チェックリスト方式という点も扱い易いといえます。しかし、任意後見契約はその効力が生じた後は委任者が能力を喪失しているので、代理権の範囲でカバーできていない問題が生じうるのではないかという不安が残ります。 これに対し第2号様式は、代理権の範囲を包括的に定めることができるという利点がありますが、それだけ任意後見人の権限が強くなり、任意後見人が権利濫用をする危険も大きくなるといえます。

Q.
本人の判断能力がすでに低下しており任意後見契約を締結できるか微妙な場合、任意後見契約はむすべないのでしょうか?

A.
任意後見契約も契約ですから、契約を締結できる判断能力がないと契約は無効になってしまいます。特に即効型の場合は本人の判断能力が低下している状態ですから、契約が無効となる可能性も高いといえます。 このような無効の任意後見契約が結ばれると任意後見による本人の保護が図れません。また、そのような事態とならないように、公証人は任意後見契約の締結に関与し、本人が任意後見契約を締結する能力をもっているか十分検証するはずです。 しかし、現実には本人に契約を締結する能力が備わっているかどうかの判断は難しい場合があります。そのような場合、公証人は医師の診断書の提出を求めたり、本人の生活状況についての書面を資料として求めたりすることがあります。 それでも公証人が本人に契約を締結する能力を認める事ができない場合は、公正証書の作成をしないこともあります。そして、公証人は法定後見の利用を勧めるでしょう。

Q.
任意後見契約を途中で変更することはできますか?

A.
任意後見契約は変更することができますが、その場合、変更する契約を公正証書にしてその内容を登記しなければなりません。 しかし、任意後見人となる予定の者や任意後見契約が発効したあとの任意後見人を変更する場合は、契約当事者の変更ですから、当初の契約の一部変更ではなく、いったん契約を解除し、新たに任意後見契約を締結する必要があります。 さらに、任意後見人の現在の代理権の範囲に不足があって代理権を追加したい場合は、現在の任意後見契約を解除し、新たに任意後見契約を締結するか、追加部分だけ、新しい契約を締結することが可能です。もっとも、任意後見監督人が選任され、契約の効力が生じている場合は、本人の判断能力が低下している状態ですから、新たな契約を結ぶことが困難なケースが予想されます。この場合は、法定後見への移行を検討すべきでしょう。

Q.
任意後見契約を後から、解消することはできますか?

A.
任意後見契約は委任契約の一つであり、委任契約はいつでも当事者の双方が解除できる契約です(民法第651条)。そのため、任意後見契約の当事者も解除ができます。ただし、本人(被後見人)保護の見地から、解除するためには公証人の認証を受けた書面によることが必要です。当事者双方の合意による合意解除書に公証人の認証を受ければすぐに解除の効力が発生します。当事者の一方からの解除の場合は、解除の意思表示のなされた書面に認証を受け、これを相手方に送付してその旨を通告することが必要です。 任意後見監督人が選任された後は、正当な理由があるときに限り、かつ、家庭裁判所の許可を受けて、解除することができます。 なお、任意後見人について任務に適しない事由が認められるときは、家庭裁判所は、本人、親族、任意後見監督人の請求により、任意後見人を解任することができることになっています。

Q.
任意後見人の義務は任意後見契約で定められたことだけですか?

A.
任意後見人のなす義務として本人との任意後見契約によって委任された事項があります。 しかし、任意後見人の義務は本人と締結した契約のみに留らず、「任意後見契約に関する法律」や民法に定められた義務もあります。具体的には次の内容などです。 成年後見人の場合には、民法第853条に被後見人の財産調査・目録作成の義務が定められていますが、任意後見人には直接的な義務規定はありません。しかし、任意後見契約に定めがなくても、任意後見人は受任者として一般に要求されている注意義務を果たす義務があります(任意後見契約に関する法律第7条4項、民法第644条)。そして、任意後見人が職務を適切に遂行するには財産状況を確認しておくことは重要ですから、一般的には、財産調査・目録作成は任意後見人の義務であると考えられます。 さらに、本人の心身の状態や生活状況に配慮する義務があります(任意後見契約に関する法律第6条)。したがって、医療や介護サービスの内容を確認する義務があります。 また、任意後見人の事務に関し、家庭裁判所に定期的に報告する義務があります(任意後見契約に関する法律第7条1項2号)。 つまり、裏を返せば、任意後見人は任意後見監督人に事務について報告の義務があるといえます。

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